内容説明
憑かれたように走って死を迎える男。満月の夜に繰りひろげられた血塗られた饗宴。内臓をむさぼる美しい女。漆黒の虚空を泳ぐ巨大な竜。濃霧の中から突然広がる屍累々の世界。壜の中に浮かぶ緑色に染まる女の裸体…。日本土着の残虐と優美を現代に投影する、めくるめく幻想と現実の夢魔。当代きってのエンターティナーが描く、鮮烈なイマージュの全九話。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
鷺@みんさー
46
初期の夢枕貘。表紙は天野喜孝。ホラー系SFというべきか。筒井康隆風味もある短編集。解説は大原まり子。昭和60年発行という時代背景を感じさせる話もあるが、山と絡めた幻想譚が、古今東西の宗教観とも絡み合っているのが後の作品を彷彿とさせる。山とエロスとアイロニーとノスタルジー。ジョギングしている人間が次々と不可解な死を遂げる「鬼走り」、時間と空間のねじれを見事に表した「霧幻彷徨記」、有名な短編ホラーを彷彿とさせる「八千六百五十三円の女」が面白かった。2019/06/21
キー
11
夢枕獏氏の1984年刊行単行本を1985年に文庫化したもの。 短編が9篇収録されています。 2002年に角川ホラー文庫から再発売されているので、ホラー小説を期待して読んだのですが、読んでみると、ちょっと違いました。現代を舞台にしていながら現代日本を感じさせない、民話のような、何とも不思議な感覚。日常からふっと非日常の世界に入り込んでしまう話でまとめられています。 時折、1980年代ホラー映画のスプラッター・ブームに影響されたような人体破壊描写が在るので、角川ホラー文庫から再発売されたんでしょうかね。2019/09/13
冬見
10
どれも面白かったけど、「ことろの首」「中有洞」「骨董屋」「四畳半漂流記」あたりが特に好き。「ことろの首」は冒頭が上手くて引き込まれる。ラストに向かって高まっていった緊張感から一気に解放されるオチもなかなか。基本はホラーだけど全体的にSFっぽい作品が多く、「四畳半漂流記」は藤子F不二雄っぽい。2016/08/02
5〇5
5
陰陽師の印象の強い著者の約40年前の作品を読んでみた。日常の先にある異界に迷い込み、怪異と遭遇する。それは悪夢と言い換えてもいいのかもしれない。読みやすさは変わらないけれど、幻想的でありながらダークな雰囲気も絡めているところが新鮮に感じられる。😄2024/08/15
kenpapa
2
再読。怪奇物の短編集。気に入って昔よく読んだのを懐かしく思い出した。どこか滑稽な「鬼走り」と「ことろの首」が面白い。どの作品も真相がはっきりしないモヤモヤ感はホラーなので仕方無し。2019/04/24