出版社内容情報
当時会社員だった著者が週末を利用し、それまで乗っていなかった国鉄の路線・2万キロの完全乗車達成に挑んだ。三年もの歳月をかけ、時刻表を駆使しながら成し遂げた挑戦の記録。鉄道紀行の最高峰。
1 ~ 4件/全4件
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
TSUBASA
36
幼少期から鉄道の時刻表に魅せられ、時にその時刻表に「乗りに」全国の国鉄路線に乗って来た。昭和五十二年、全線区の総キロ数は約2万キロ。全線区を乗り潰すことを決めた著者の死闘の記録。『最長片道切符の旅』を先に既読だったけど、あるべき、尊敬すべきオタクの姿と言える。1日数往復しかない線区に乗るべく、乗り継ぎの効率のため時刻表トリックめいたことをやってみたり、時刻表の全線区キロ数の総和と営業キロ数が異なるため不満を抱いたり、他人から見れば死ぬほどどうでもいいことを自分の満足のために徹底する姿は憧憬すら抱く。2020/04/22
しき
31
国鉄全線2万キロ全てに乗った苦闘の記録。土日休みを使っい、日本の隅っこにある1日数往復しかないようなローカル線を乗り潰す。自然描写や人との触れ合い、鉄道運用の考察や乗り継ぎテクなど、要素がふんだんで味わいの多いレポだ。完乗を達成したときの感想がなかなか興味深く、胸に残る。著者の心に芽生えたのは達成感ではなく、虚無感だった。著者はそれを、定年退職や娘を嫁にやった気分にたとえている。旅は人生そのものと言うが、まさにその通りだ。2020/07/28
piro
29
長らくご無沙汰の汽車旅に想いを馳せ再読。昭和50年代前半、当時の国鉄全線を乗り潰す稚気溢れるノンフィクション。完乗に向け残ったローカル線の乗り潰しが中心。乗り辛いから残っている訳で、極端に本数が少なかったり、アクセスが悪かったりするので時刻表を丹念に読み込む宮脇さんの苦労が滲んでいます。単なるマニアの自己満足の話ながら、薀蓄やユーモア溢れるエピソードが織り交ぜられ退屈しません。当時国鉄全線で2万キロ以上あった路線も相当減っていて、宮脇さんが苦労して乗り潰した路線の大半が廃線になってしまった事はとても残念。2019/09/15
高橋 橘苑
25
<プレイバック 1978年> 時刻表愛読者の著者が、国鉄全線2万キロの完乗を目指した鉄道紀行文。そのユーモラスな文章と馬鹿げた情熱に、思わず引き込まれてしまう。私の年代では国鉄旅行というと、山口百恵の「いい日旅立ち」を連想してしまうが、調べてみると同じく78年のヒット曲だった。忙しかった日常から離れ、ゆっくりと流れる車窓の風景に想いを馳せる。それは、当時の最高の贅沢でもあっただろうか。暮夜、時刻表を開いて次の計画を練り、あと〇キロ、累計〇%と計算する著者の楽しみは、私には充分すぎるほど理解できる気がする。2016/12/18
まーみーよー
24
乗り鉄、時刻表鉄の中学生息子のバイブル。JR世代の子供が国鉄線全線完乗を目指した本作のどこに惹かれるのか興味がでたので手に取ると「日本ノンフィクション賞」受賞、しかも選者のお一人に吉村昭氏の名前があり「傑作の名に値する」とある。著者の宮脇さん、中央公論の取締役で激務の間に未乗区間を乗り潰すのだ。鉄道好きにはたまらないだろう。文章もユーモアがあり、時に路線を擬人化したりして読んでいて面白い。ひたすら鉄道に乗りながらその土地の地理的事情をさらりと文章に盛り込んであり一緒に旅している気分になった。 2020/06/06