内容説明
葡萄づくりの町。地方の進学高校。自転車の車輪を軋ませて、乃里子は青春の門をくぐる。生徒会の役員保坂に寄せる淡い想い。ラグビー部の超スター岩永との葛藤。そして、笑いさざめき、かすかに憎しみ合う級友たち―。目にしみる四季の移ろいを背景に、素朴で多感な少女の軌跡を鮮やかに描き上げた感動の長編小説。直木賞候補となったこの作品は、青春小説の枠を超え、鮮烈な印象を与えて、選考委員たちの絶讃をあびた。会心の代表作である。
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TERU’S本棚
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
kaizen@名古屋de朝活読書会
131
東京から急行で2時間ほど離れた、葡萄畑のある町。サッカーをやっている学生が出てくるのに章の見出しには野球場しか出て来ない。そういう世代,そういう時代なのだろう。野生時代別冊特集林真理子スペシャル書き下ろし。随筆より小説の方がいい。解説の栗本伸一郎が入れこんでいる。まず,大江健三郎と対比し,フランス女流哲学者ヴェーユ,バタイユを引き出している。林真理子スペシャルにも関与した栗本伸一郎の自慢話かもしれない。2013/08/20
優愛
128
周りの目を気にしすぎてしまう主人公、乃理子。こんなにも共感できる小説にも数多くは出会えないんだろうな。いつも側にいる人が考えていることなんて分からない。慣れない恋心にもすぐには気づけずに過ごす毎日は塩辛いものだけれど、今しか出来ない経験をどうか大切にしてほしい。上手に泣けるようになった最後には成長を見てきたからか嬉しさが込み上げてきました。淡い紫色から巡り行く季節を今の乃理子ならどう見るのだろう。どうかその瞳に輝かしく映りますように。蒲萄づくりの町にも訪れてみたいなと幻想を抱きながら閉じた最後の一ページ。2015/01/30
青蓮
104
読友さんの感想より。読んでいて10代の頃の自分を見ているようでした。垢抜けなくて野暮ったい、容姿にどうしようもないコンプレックスを持つ自意識過剰な乃里子。そんな彼女を笑えないのは私の中に乃里子がいるから。性への目覚めと好奇心、異性への淡い思いや憧れ。「女」としての自分の価値が如何程であるか、周囲の同性と比較して一喜一憂したり……思春期の心は不安定で忙しない。でも、思春期って皆こんな感じなんじゃないのかな。だからこそ本書は多くの共感を呼び、読み継がれているんだと思います。青春小説の決定版。2017/01/13
あきぽん
98
カドフェス2020限定カバー。高度成長期の山梨の素朴な女子高校生の葡萄のように甘酸っぱい青春物語。本編は世代を超えて全ての人が共感し楽しめる名作。ただ、終章の大人になった主人公のバブリーな生活と巻末の難解過ぎる解説は今の人は共感できないので削除すべき。2020/07/25
あつひめ
90
あー、こういう伝え方もあるんだな…と感じたのは、一気に時を進めてしまう方法。学生時代、狭い環境の中で、自分で自分の枠を決めてしまって生きていた女の子が、いつの間にか大人になって人に憧れられるような上から目線になりやすい女になっていた。多分、本人の芯の部分は変わりはないのかもしれないが、どこか澄ましたところがちょっとがっかり。でも、再会の折、長年心にしまっていた思いが滲み出るような方言での会話は、ホッとするラストとなった。いつも、自分を喜ばせたり苦しめたりするのは、本当は自分自身なのかもな。2015/06/15
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