内容説明
声、匂い、足音、ためいき、錯覚など目に見えないものを主役に、そして、想像力を脇役にして、イメージ豊かにくりひろげられる独自の世界。―手なれた会話。ちょっと不思議な小道具、たとえば、繃帯、年譜、鋏、ジャングル・ジム。シャープなアドリブ。ショート・ショートの楽しさを思いのままに演出した、岸田今日子の新境地。書下し「左手が語った」を収録。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
nuit@積読消化中
70
女優の岸田今日子さんがこんな素晴らしい魅惑的なお話を書かれていたことに、非常に感動しております。25話の珠玉の短編集。幻想的な岸田ワールドに酔いしれる読後感。こんな短いお話なのに、筋書きが完璧に作りこまれており、1話読むごとに唸ってしまうほど。読み終えるのがもったいない本でした。今回は図書館から借りて読みましたが、絶対に再読するだろう本として、古本屋からでも手に入れねば。お勧めです。2020/09/10
新田新一
31
女優の岸田今日子の短編集。残酷でブラックな味わいを持ちながら、どこか郷愁を感じる物語ばかりで非常に好みでした。冒頭の「ジャングルジム」は、こんな話です。一人ぼっちの子供が公園で少年と知り合います。急に自分の国に帰ることになった彼は、夜中に公園へ駆けていきます。ジャングルジムに登るとあの少年の声が聞こえてきました。「オニサンコチラ」と言いながら子供はジャングルジムを登り続けます。すると……。怖い話なのですが、夢の中に入っていくような独特の雰囲気があります。作者は童心を持ち続けた人だったに違いありません。2024/10/20
リッツ
25
ひきこまれてため息。魅惑的です。岸田今日子さんのお話にふれると私は遠い都会と森とを同時に連想します。2020/08/27
skellig@topsy-turvy
20
波間にゆらゆら漂うような語り口に付いて行くと、残酷な男に不気味な子供、亡霊のような女に出会う。甘いケーキだと思ったら、中に入ってるのはクリームじゃなくて緩慢に死へ導く毒薬だったような気分。ブラックでシニカルで幻想的な、人間と動物それぞれの分かりあえない断絶に満ちている切ない掌編集。結婚直前の女に包帯着用を求める妖しい「繃帯」、女の愛憎が静かにうねる「白の絹糸」、思わずオチにくすりと笑ってしまう表題作など、静かながら表情豊かな人生が詰まっていた。2013/11/06
芍薬
13
お伽話の様な甘さと残酷さ、不条理な結末が美しい短編集でした。左手や包帯も好きですがやっぱり『冬休みに あった人』が好きでした。2014/12/28




