内容説明
ホーム・パーティを抜けだして、2階のウォーキング・クロゼットで憑かれたような情事をもった邑子。夫を裏切っているという痛いほどのスリルにみち、恐怖と混然一体となった欲望と快感のなかで、片方のイヤリングが忽然と消えた――。夫のいるはずのない時間帯にかかった1本の電話がパーフェクトに装われた不倫の恋を、イヤリングが情事の現場を顕にした。表題作「イヤリング」ほか、夫婦関係の破綻、男と女の愛の脆さを、婚約、結婚、離婚というそれぞれの状況の中で描く、緊張感あふれる作品集。文庫オリジナル。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
ひと
12
「一等待合室」を読んでみたくて手に取った本。不倫を中心とした男女関係がテーマの短編集。全体的に暗く、心理サスペンス感があります。バブル初期の作品のせいか、生活自体は華やかな雰囲気。憧れはないですが、森瑤子作品ならではのカッコよさが漂っている気がします。川端康成の「三等待合室」と読み比べてみます。2025/06/16
はりねずみ
3
何の過不足も無い平穏な日常。たまにパートナーとぶつかる事もあるけれど、幸せに相違ない。それなのに突然日常に嫌気がさし自分を獣にしてくれる、荒々しい感情に出会わせてくれる出来事を求めてしまう。しかしいざその場面に出くわすと丹念に編み込まれた日常がほつれるのが怖くて二の足を踏む。日常に組み込まれている事への反発と虚しさの葛藤を男女の関係を通して描く。最初の二編がまるでバブル時代の華やかさを崇拝する昼ドラのようで好きではなく読み通すのをやめようと思ったが、最後まで読んでよかった。特にケアレスウィークエンドが◎2013/08/23
みい⇔みさまる@この世の悪であれ
3
☆×5.0…著者の描く男女の世界というのはとにかく生々しいに尽きます。なぜならばそれだけ男女の心理というのをよく理解し、巧みに描写しているから。特にそれを感じたのは表題作である「イヤリング」でしょう。完璧につくろっているからこそ出てきてしまう隙、というのがあるのです。勘がはたらいてしまうような隙、が。しかしそれの加害者もまた罪作りです。本当に猛獣にふさわしい男なのですから。そのほかには「不倫の理由」もまたインパクトのある作品です。火遊びの結果は…2012/10/28
ayah
1
夫の知り合いと不倫している妻の話と、友だちの夫と不倫している女の話が、同じ。2025/04/05
山内正
1
電話が来ない入選の知らせが 祖母祖母の窓から海を眺め今日子は 溜息をつく 入選しなかったらどうするはの 友達の一人だった渉から一年前に 結婚しようと言われた 人生が決まってしまった事に戸惑った 出し抜けの幸福の絶頂に狼狽えた 結婚なんて形式と言ってきたが ここ迄黙って来て良かった お祖母様明日お客様着ますから 東から来る男は良くないわ! 電話が来た俺だ当選した 今夜来るんやでしょ 黙った 遅くなるかも 潮風を顔に受けながら 結婚したくないんでしょ本当は? 指輪外してもいいでしょ? 叔母様の霊感当たったわ!




