内容説明
柔らかい陽射しが街を包み、川面を渡る風も爽やかな5月の昼下がり。加賀田省平は、給料日前の財布の軽さに心細さを感じながら、昼食を済ませた。会社に戻る途中、省平はかつて熱愛し、現在もなお忘れられぬ、今は亡き恋人の玲子と同じ芳香を感じた。ふとそちらへ目をやると、鶯川の橋上にひとりの女性が佇んでいる。透き通るほどの白い肌に沈んだ美しさを湛えながら…。省平は胸を躍らせながら、彼女と言葉を交わした。省平はまだ気付いていなかった。この運命の出会いが、恐るべき事件の幕開けであることを…。巨匠が綴る白眉の書下し恐怖サスペンス小説。