出版社内容情報
栄枯必衰がはげしくくりかえされる源平の世。その中にかくされた後白河法皇の不気味な存在。だが――その周囲には権力にこびへつらえながらも現実に根をはっていく個性豊かな人間の姿があった。連作歴史小説。
内容説明
人間の欲望と権力―栄枯盛衰の源平の世、その裏にある、後白河法皇の不気味な存在…。そして周囲にはびこる巨大な権力にこびへつらう人間模様。かわらぬ人間の欲と、変転きわまりない時代の流れを絵巻に準え、かつての独裁者入道信西の子であり冷徹な観察者でもある静賢法印の「日記」を「詞書」とした連作小説の傑作。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
紅花
11
後白河法皇を中心とした物語。静賢法印の冷静な目が(作者の価値観だけど・・)登場人物の裏を見せてくれるようで面白かった。貴族のあまりの滑稽さ、貴族として生まれたばかりの幸運の裏の、悲哀がおもしろい。「炎立つ」を読んだ後なので、平安貴族の政治家としての能力のなさを感じるし、新しい時代への匂いもする。2014/04/07
真理そら
7
再読。静賢法師の日記を挟みながら源平の時代を描いた連作集。永井さんの歴史観は一貫性があるので、その歴史観への賛否は別にして安心して読める。後白河法皇は日本史の中でも好きな人物だ。わがままで不気味でとらえどころがないような人物だけれど、このしゃらしゃらとした生き延びっぷりは清々しいほどだ。兼実のような賢い人には到底真似のできない生き方。そして普通の人はほとんどが兼実のように生きている気もする。2017/10/27
たまうさ
7
静賢法印の部分はいらなかったと思うが、源平から初期鎌倉までの時代を貴族の視点から見る、という発想は評価したい。九条兼実を愚痴ってばかりの責任回避、と切り捨てるのは面白かった。それにしても、ここに描かれている貴族たちを見ると、貴族が政権の座からころげ落ちたのが良く分かる。所詮、貴族にとっての政治とは自己の出世と金儲けでしかなく、時代の変化なんてどうでもよかったんだもん。2017/07/26
kanako
7
平安〜鎌倉の権力闘争を描いた作品。次々と移ろっていく権力者たち、渦中の人物の目線で語られた章とそれを一歩ひいて眺めている静賢法印の冷静な目線で語られる章が交互に配置されていて、それは本当に絵巻を見るよう。優雅さと華やかさの中に様々な人物の心情、思考が入り乱れ目眩がした。2012/02/13
りーよ
4
平安末期から鎌倉初期の権力まわりの人々と権謀術数の群像劇という絵巻と、その合間に挟まれる、その場に居合わせてはいるが本編には出てこない静賢法印という第三者による冷静な観察日記による詞書。えげつない権力争いの中にも登場人物たちの人間臭さも見えてきて、それが「絵巻」の美しさに繋がっているのだと思う。2020/04/25




