出版社内容情報
一緒に暮らしているために、見えなくなってしまうものがある。その時は離婚以外に選択肢がなかったふたり。彼らが再会し、新たな関係をはじめようとするとき、どのような道を辿るのだろうか。大人のための短篇集。
内容説明
会いたくてたまらなかった。もう会うこともないだろうし、二度と会わなくても構わないと思っていた。しかし、離婚してはじめての秋、男は、別れた妻にもう一度会いたいという気持ちを抑え切れず、彼女に電話をかける。何故、彼女と別れなければならなかったのか。いったい自分にとっての彼女とは、どういう存在なのだろう…(「私はいつも私」)。さまざまな別れ、そして再びの出会いの風景。ビタースウィートな七つの短篇。
著者等紹介
片岡義男[カタオカヨシオ]
1940年東京生まれ。74年に『白い波の荒野』で作家デビュー。75年、『スローなブギにしてくれ』で野性時代新人賞を受賞。かつてないスタイルで若者の心象風景を描き、70年代から80年代を通して時代の圧倒的支持を受ける
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
SOHSA
23
《kindleunlimited》表題作ほか6篇の作品からなる短編集。どれも離婚した女性がテーマとなり、どの女性も生き生きと自立し人生を楽しんでいる。まさに私はいつも私であることを胸を張り静かに主張している。それがたおやかで清々しい。「三十年、そして四十年。すべては過去となる。そして過ぎ去った時間は、余韻となってそれだけが自分の手のなかに残る。」(『雨の降る駐車場にて』)やはり片岡義男の小説はとても魅力的だ。いつまでも脳裡にリフレインが続く。2022/08/19
たくみ
1
「別れ」をテーマにセレクトされた短編集。他にチョイスすべき作品もあろうに、と思わされる。カバー写真とは合っているが。2021/05/31
ミル
1
80年代、まだ大学から新人社会人時代に貪るように読んだ作家の作品を改めて読破。今は亡き内藤陳さんが「片岡義夫が描く女性や景色って、この上なく美しく、読者を別の世界に連れていってくれる」と言われていたが、まさに至言。ただ、ストーリー的には、どうということはないので、いわゆる文学に触れたい人には違和感があるかも。 気持ちの良いフュージョン(これも80年代だね)を流しながらドライブでもしてる気分を味わいたい人にオススメかな。2020/07/23
CEJZ_
1
1P18行。2015年は「私以外私じゃないの」という曲が流行り、演奏する特異な名のバンドが脚光を浴び、やがてそのバンドのVoの言動が注目を持たれるようになった。「私」という言葉が2つあるものなら、「私はいつも私」という文庫本の題名が、昔からずっと心に残っている。片岡義男の作風や、作品のイメージならよくわかる。角川文庫、背表紙は赤、膨大な著作数、白地にポートレート、平熱平面の状景、男女の情景、字幕のような会話、服装を語り、佇まいを語り、出来事を語る。他に「私は彼の私」という題名の作品もある。2016/01/20
yourkozukata
1
「彼女のリアリズムが輝く」推理と結末の予測できない鮮やかさに脱帽。2008/09/12