出版社内容情報
戦中・戦後を知るミステリの天才が書いた昭和ミステリの白眉!”誰カガ罰セラレネバナラヌ”――ある死刑囚が残した言葉が波紋となり、静かな狂気を育んでゆく。戦争が生んだ突飛な殺意と完璧な殺人。戦争を経験した山田風太郎だからこそ書けた奇跡の傑作ミステリ!
山田 風太郎[ヤマダ フウタロウ]
著・文・その他
内容説明
昭和30年代後半の東京。才気に満ちた美貌の苦学生・鏑木明は、アルバイト先の屋敷で社長令嬢・多賀恵美子と出会い、偶然にも特権階級への足掛かりを手にする。献身的だが平凡な恋人・容子を捨て、明は金持ち連中への復讐を企て始める。それが全ての悲劇の序章だとは知らず…。“誰カガ罰セラレネバナラヌ”―静かに育まれた狂気が花聞く時、未曾有の結末が訪れる。戦争を経験した著者だからこそ書けた、奇跡のミステリ長編。
著者等紹介
山田風太郎[ヤマダフウタロウ]
1922年兵庫県生まれ。東京医科大卒。47年「達磨峠の事件」で作家デビュー。49年「眼中の悪魔」「虚像淫楽」で探偵作家クラブ賞を受賞。その後、58年『甲賀忍法帖』を発表し忍法ブームに火を付けた。2001年没(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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koma-inu
61
舞台は昭和30年代東京。男女のドロドロした話が中心なのに、各章のタイトルが「死刑執行○ヶ月前」とミステリ。いつミステリ話になるの?と期待しながら読み、実際事件が起きるのは終盤で・・。と、ラストのある仕掛けに一本取られました。主人公、ヒロイン、その他の登場人物、全てが伏線。トリックの実現性など気にせず、犯人の壮大な仕掛けを楽しむ作品です。廣済堂文庫版の紹介文は強烈なネタバレあるので、未読の方はご注意を😅2022/12/31
№9
35
太陽黒点、なんという象徴的なタイトルなんだ!それは本編を読み終えたときにはじめて気付く。本編の舞台は「もはや戦後ではない」と経済白書にうたわれ、奇跡的な復興を遂げた昭和30年代、黄金のシックスティーズだ。しかしあの時代に、まだまだこのような戦争の翳(かげ)が残っていたんだな。物語は若い男女の破滅へ堕ちていくさまのウラに、現代読者が想像もできないであろう犯人の、鬱屈とした動機を最後に知ることになる。それが本編のタイトルに象徴されるとは!エンターテイメントの読みやすさの中にずしりと響く、そのテーマに感動した。2014/07/01
hanchyan@つまりはそういうことだ
34
山風にハズレ無し!とまずは読友さんを真似して言ってみる(笑)。う~ん。とてもとても面白かった。青年期の焦燥・堕落へと誘うファムファタル・暴走する純愛・・・といった要素を取り上げて「昭和だベタだ」と嗤うのは容易いが、19世紀文学的なそうしたテーマを、まるで一人でいる部屋の隅に蟠る輪郭も朧な闇と眼が合うような文章でちょこちょこ覗かせつつきちんとエンタメになってる手練の業をみっちり味あわないなんて損ソン!そして、すべての元凶たるメフィストの抱える漆黒のルサンチマンに、今現在を生きる日本人こそ戦慄すべきだ。傑作。2015/11/24
カノコ
27
昭和三十年代後半の東京。美貌の苦学生・明はアルバイト先で社長令嬢の恵美子に出会う。容子という清廉な恋人がありながら、明は恵美子に近づいていく。終戦から二十年近くが経ったが、未だ戦争の記憶が人の心に影が落とす時代である。そんな中、貧困や格差に喘ぐ若者たちが転落していく様が仄暗い美しさを湛えていて、妙に魅入られる。逃れられない破滅の匂いの先に待つ、微塵も想像だにしなかった結末に、打ちのめされるような思いがした。遣り場のない怒りと絶望のエネルギーの結晶。山田風太郎の思惑と、それを実現させた剛腕に戦慄する怪作。2023/03/22
じょり
27
初めて山田風太郎作品を手に取った。まさかそんな展開だとは思わなかった。いろいろと予想を裏切られた。2012/03/13
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