出版社内容情報
記憶を失った谷川弥太郎に次々と襲いかかる刺客、その裏には過去の御家騒動があることがしだいに明らかになる。そして盗賊の跡目争いに巻き込まれた弥平次にもまた、刺客の魔の手が――。
内容説明
笹尾平三郎、それが弥太郎の本名なのか。執拗に弥太郎を狙う土岐家にいったい何があったのか。命を狙われながらも、弥太郎の秘められた過去に近づいていく弥平次。一方、弥太郎は、恩人である弥平次に向けられた魔の手に対し、自らの撃剣をふるう。互いに信頼を寄せ合いながら危地をくぐり抜けていく狩人たち―。盗賊の跡目争い、御家騒動、香具師の縄張り争い、絡み合う暗黒街の欲望に立ち向かう二人の男を描いた傑作時代小説。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
優希
48
弥太郎の素性に迫っているのは相変わらずですね。まわりの人情にはじんわりさせられました。最後は映画のような空気感。弥太郎の過去が徐々にわかっていきながらも、記憶が完全でなくても生きていけるのだと思いました。2023/03/10
はつばあば
40
あぁ清右衛門!金の亡者に魅入られたか!。弥太郎、若い殿御故乙女の柔肌が忘れられないにしてもあまりにも向こう見ず。弥平次は弥太郎の過去と向き合う女性と出会っていると言うのに。まぁ大名の家の事、盗人には手も足もでませんわな。それにしても清右衛門、老いて欲をかいてはあきません。畳の上で死ぬるが最高。弥太郎も昔の事を思い出してもせんないことと何処かへあの乙女と。それから3年・・再会の日が待ち遠しい弥平次と弥太郎。ハラハラドキドキが止まらない本は久し振りでした(^^♪。2022/05/28
ここぽぽ
11
闇の世界の暗躍する話ではなく、人情の繋がりと市井の人の大切な暮らしが刻々と見えてきた。爽やかな読了で、哀しい中に時の流れと良き日の大切さを教えられた気がする。2023/05/07
おもろい於間抜
6
現代社会では失われつつある感受性が江戸時代の市井にはあったという牧歌的な物語が心地よかった。人と世界の関係性は言葉にはならない心と心との通じ合いがあると信じていたいと思った。2019/12/06
文句有蔵
5
面白かった。人の世の情けを知った。恩は着るもの、というが、はからずも思わぬ結果になってしまった時、まことに申し訳なく、「合わせる顔がない」と身を退いてしまうことが我が身にもあり、人の態を見てさもあろうと思ってもきたが、どれほど身勝手であろうと、やはり厚情には謝して頭を下げねばならぬ……時があり、相手があるのだ。損得感情なく純粋な好意だけで付き合ってくれた相手ならば、時を置いてでも事情を打ち明ければ、相手は得心してくれるのだろう。許してくれるかどうかは別にして。……しかし物語としては半端な結末(^-^;)2015/01/23