内容説明
女性ばかりの住む白雪荘。その一室でバー『デラ』のホステスあかねが絞殺された。現場には常連客の大田垣が呆然と立ちつくしていた。警察は殺人容疑で大田垣を逮捕するが、『デラ』のママ杏子は、大田垣の温厚な性格からして彼が犯人だとは思えない。彼女が知人の弁護士海老沢とともに独自の捜査を展開すると、白雪荘の住人たちの意外な奇癖が…。そこに隠された驚愕の真相とは。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
はんげつ
3
佐野洋、長篇もいいじゃん……。密室状況に被害者と一緒にいた男の無罪を証明しようとするユダの窓的な展開が大筋ですが、そこは佐野洋、犯人・手段・動機といったありきたりな謎だけで興味を掴むような語りはしてきません。絶妙に行き先を悟らせないから、ああこういう話だったのかという、快感が増す。それが「一本の鉛」という不思議な題名の意味へと帰着して、ウマイッ!と唸る。自分はこれだけでも満足なのですが、意外に(?)ロジカルな消去法で犯人を指摘してみせる段もあったりして、もう大満足です。いいぜ佐野洋……2019/08/08
東森久利斗
2
閃き、アイデア、プロット、舞台、登場人物、構成、展開、物語、セオリーの軌跡、ミステリー界の中興の祖、匠の技、丁寧な仕事。後世に語り継ぐべき昭和ミステリーの秀作。埋もれた、忘れられた作品に焦点を当てる読者のための好企画、角川文庫のリバイバルコレクション。個性的な登場人物、人間関係、舞台設定、2時間TVドラマ、舞台映えしそうな内容。講談社文庫で読了。2023/12/07
星屑の仔
2
時代もあるのだろうが、会話文がとても古臭いのと、登場人物の区別がいまいちつきずらい。そして同年代のミステリにも言えることなのだが動きが非常に少ないのが気になる。事件の捜査のほとんどが参考人への聞き込みしかないので、主人公たちの活動に躍動感が見られない。ただあっちに行って話を聞く、こんどはこっちに行って話を聞く、じゃあ集まって情報の整理だ、の繰り返しなので読んでいてどうしても飽きる。 作品全体として伏線の張り方に関しては感心できる分、ちょっと残念。2017/06/06
kanamori
0
☆☆☆2010/10/09