内容説明
鉄を食べる人間―それがアパッチだ!憲法改正によって失業罪に問われた木田福一は、食料も水もない廃墟の追放地でアパッチ族になった。その勢力が増大するにつれ正体不明のアパッチに日本国中が大騒ぎとなる。ついに軍隊はクーデターを起こして政府を倒し、アパッチ族を制圧にかかった…。現代文明への痛烈なる諷刺を巧みな筆致で描き出す珠玉の一冊。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
yumiha
43
初めての小松左京。失業したら追放地に閉じ込められ、そこで生き抜くために食鉄人種となったアパッチ族たちの戦いを大阪弁をまじえて荒唐無稽に描いた作品。なんせ鉄を食べるんやから。強~い体にもなるし、経済的にもお得なんだそう。でも、鉄の匂いって苦手な血の匂いがするような気がする私にはとうていム~リ!このアパッチ族のみなさん、居留地を求めて日本政府と対立し‥って『吉里吉里人』(井上ひさし)みたひ。そして、アパッチ族(最底辺層か?)を通して、政党も軍人もマスコミも人間としての楽しみも、批判してる。なんちゅうこっちゃ。2025/01/29
s-kozy
42
小松左京の処女長編。戦後10数年経った大阪に出現した「鉄を食べる」新人類、アパッチ族の物語。まえがきで「荒唐無稽な、架空の物語」とあるのに、著者らしい緻密な描写で今、読んでも「鉄食人、いてもおかしくない」と思わされる。アパッチ族が生きるための場所を求めて日本政府に居留地を求めるところなんかは井上ひさしの「吉里吉里人」を思い出したりもした。「こんなのありえない」という設定なのに説得力高く読めるという点でSFらしい佳作と言えるでしょう。2015/01/30
七色一味
14
読破。再読です。日本SF界の巨匠の処女長編がこちら。コレを書いた当時は貧困にあえいでいた小松左京が、娯楽がない奥さんのために毎日原稿用紙に書いては置いていったという逸話のある作品です。東京オリンピックの年光文社から刊行された、と考えると、この想像力は凄まじいものがあるし、今読んでも違和感なく現代に置き換えた情景が浮かぶのも凄い。2011/11/16
モリータ
13
開高健の『日本三文オペラ』とはまた違う、鉄をマジで食う日本アパッチ族。映画でも面白いかもね、『第9地区』みたいな感じで。2016/03/04
モリータ
4
気分転換に再読。しかしこうして読み直すともっと長編で読みたかった気もする。2020/11/18