内容説明
大和王権の権威を東国に示すため東征の旅の途にある倭建(ヤマトタケル)は、駿河を従え、最大の目的地である毛野国に迫る。しかし房総半島に向かう途中、愛する妃・弟橘媛が海神の犠牲となって命を絶つ。弟橘媛の死と暗躍する大和の敵対勢力を前に、東征の意味を自問する建は、戦うことの無意味さを悟り、自分のために生きることを決意する。陸路、大和への帰路についた建を再び宮簀媛が待ち受けていた。再会は不幸の予兆となるのか?自らの運命に立ち向かうため、建は最後の戦いに臨む。黒岩重吾最大の古代史小説、遂に完結。
著者等紹介
黒岩重吾[クロイワジュウゴ]
1924年大阪生まれ。同志社大卒。1961年、『背徳のメス』により第44回直木賞受賞。社会派現代小説の他、『天の川の太陽』(吉川英治文学賞)や『落日の王子 蘇我入鹿』など古代史ものにも力作が多く、1992年第40回菊池寛賞を受賞。2003年3月没
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感想・レビュー
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hrmt
31
戦わずして勝つことに目覚め、駿河までを従え更に東を目指す倭建。大和から暗殺者を差し向けられるほど疎まれ東征の意味に疑問を抱き、己の運命に未来を見出せず、生きる為にやっと決意する。最愛の弟橘媛を亡くし、忠節の部下たちは居ても建の孤独感は払拭できなかった。それぞれの一族を背負っている彼らは好意からであっても期待し好きに望む。将としての決断は他の誰にもその責を問えない。英雄はいつの時代も孤独なのでしょう。猪喰を絡ませることで、影として生きなければならない運命がより浮き彫りにされて物語の深みとなっている気がした。2019/04/05
浦
9
六冊続いてきた倭建物語の最終章。古事記・日本書紀で結末を知っている人にも、決して退屈しない展開になっている。作者の物語構成能力はすばらしいと思う。読んだのは電子書籍の文庫版だったが、この本が単行本のときの題名は「孤影立つ」だった。終盤、倭建の死後にもうひとりの主人公が最期を締める。表の主人公倭建のそばに、いつもたった孤り、影のように立っていた男は誰か。その男こそ、作者が生み出したもうひとりの英雄だった。倭建はなくなるが、彼のおかげで倭建の息子は生き、倭国の王、仲哀天皇となるのだ。2017/11/03
ひろ
4
ヤマトタケルは、実在した可能性のある皇族であり、古事記・日本書紀に描かれた伝説的英雄とされているが、実際の人となりはわからない。 ただ、記紀に描かれているという事実がその愛される人物像を浮かび上がらせる。 大和朝廷が日本を統一していく過程は、武力で強引に進められたものではなく、その人物的魅力で自ずとまとまっていったという作者の描くストーリーは、日本という国、日本人という国民の形成にしっかりと根付いているものとの想いを強くさせる。 日本という国を誇りに思う。2021/12/31
ヒロ
1
ヤマトタケル4部作(6冊)ようやく読み終わった。古事記、日本書紀でのヤマトタケルの物語は分かっていたが、架空の人物を絡ませながらヤマトタケルの活躍をイキイキと描いたこの小説は物語として非常に面白かった。2017/11/05
可兒
0
長かった。後で考える2013/09/17