内容説明
大和王朝の王子であり、勇猛にして心優しき英雄、倭男具那。彼は女王・倭姫王の託宣に従い、熊襲と呼ばれ、九州で猛威をふるう狗奴国との戦いに出陣することを決心する。西を目指す男具那、その途には、狗奴国の勢力の北上にともなって各地で蜂起する賊たちが立ちはだかる。そして、女人剣士・羽女らを軍に加え、宇沙地方を跋扈する賊・鼻垂との壮絶な戦の幕は開いた―。日本最古の英雄、ヤマトタケルの生涯を描く歴史叙事詩、待望の第二弾。
著者等紹介
黒岩重吾[クロイワジュウゴ]
1924年大阪生まれ。同志社大卒。『背徳のメス』により第44回直木賞受賞。社会派現代小説の他、『天の川の太陽』(吉川英治文学賞)『落日の王子』など古代史ものにも力作が多く、1992年第40回菊池寛賞を受賞
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感想・レビュー
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ケイ
99
『日本書紀』『古事記』を読んでみたいのだが、それにはまずざっと登場人物や歴史の流れを知るための歴史小説をと思い、この前作の『白鳥の王子 ヤマトタケル 大和の巻』を手に取った。九州で「狗奴国」との対立を避けた「邪馬台国」が東進し、作られた「三輪国」。ヤマトタケルの父は、「オシロワケ王」。この中では倭男具那という名前。ヤマトの巻では、父のために王になれず自害した印色之入日子王からの因縁をもつ者との対決や、自身の双子の兄との対決と理解。この巻では、いよいよ狗奴国との対立。熊襲に攻め入る。2020/11/03
レアル
58
とうとう熊襲を倒しに西へ。戦いの物語だけあってやたらと戦いの描写が多く、その描き方の躍動的な事。読んでいてワクワクして楽しいが、この著者の小説の醍醐味の考察「ヤマトタケルノミコト」について、実在するとかしないとか、するなら誰がモデルなのか!とか。。そんな考察は行われないのか⁈これでは普通のヤマトタケルノミコト物語を読んでいる感じで少し物足りない。ただ攻撃ルートや攻め方等とても緻密に描かれていて物語はとても面白いので次巻も楽しんじゃう。2019/05/10
hrmt
30
兄の大碓を殺すよう命じられても密かに逆らい、父王から疎まれ続けた男具那も二十代半ばになり益々人望を集めていく。武勇、人間の器、共に優れていれば当然次の王にと周りも望むだろう。これが更に王の猜疑心を刺激する。まるで死んでも良いとばかりに十分な兵も与えず熊襲征伐に任じるまでの憎しみは容赦ない。他の兄弟と相容れないなか、異父弟の襲津彦王子との信頼関係は男具那にとって温かいものだったに違いない。有名な(名前しか知らないけど^^;)弟橘媛がいつのまにか妃となっていて、その馴れ初めぐらい創作でもいいから欲しかったな。2019/03/23
旗本多忙
19
双子の兄大碓王子との仲違いも解けた男具那だが、父オシロワケ王との関係はあまり良くない。そんな中、叔母で巫女の力を持つ倭姫王から西国九州の地が騒がしいと聞く。卑弥呼亡き後、邪馬台国を東に追いやった狗奴国(熊襲)が、九州を征服し朝鮮半島までも呑もうと暴れているという。九州には勇猛な川上建(カワカミノタケル)という凄腕がいる。男具那は父王の命で、大和三輪王朝を守る為に腹心の部下を連れて熊襲征討に発つ。勝つことが出来るのか、生きて帰れるのか!激しい攻防戦、英雄ヤマトタケル西戦前半の巻。2021/09/12
浦
9
前巻から数年後。主人公・男倶那は相変わらず父親から疎まれ続けるが武勇の名声は全国に轟いていた。九州の熊襲と戦うため征討大将軍に任ぜられ、自らを慕う部下と異母弟とともに西へ向かう。前巻に増して人物のキャラクターが素晴らしい。また、よく戦いをここまで間延びせず描けるものだと驚いた。2017/10/03