出版社内容情報
黒岩 重吾[クロイワ ジュウゴ]
著・文・その他
内容説明
夜の非人間的な女誑しと昼間の正義の医師、植秀人。大阪の阿倍野を舞台に、デカダンス、ニヒリズム、無気力、情欲、犯罪が百鬼夜行する異常空間を描いた、ハードボイルド的長編推理の傑作。第44回直木賞受賞作品。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
たぬ
31
☆4.5 これまた若竹七海氏の作品内に出ていたもの。「ズベ公」「ビート族」「裕次郎ふう」といったワードに時代を感じるわね。主人公の度を越した女癖の悪さもわりとすぐ気にならなくなるくらい主題の密度が濃かった。誰が犯人? 目的は? 登場人物たちの因果関係は? とあらゆることが気になって夢中で読んだ。タイトルは医療器具と女とをかけてるのかな。直木賞受賞だそうよ。2021/05/18
カニック
7
昭和時代の名作。ミステリーというよりもハードボイルド系。直木賞受賞作。人間の性(さが)や二面性が大きく浮き彫りにされる様がよかったです。2018/11/02
tenchi
2
社会の底辺に生きる人々を相手にする大阪の病院を舞台に展開する医療ミステリーで、主人公の医師植秀人は妻の裏切りによる離婚以来、医師の誇りは保持しつつも女あさりだけを捌け口に世の中を斜に構えて生きるようになる。学閥や階級意識の権化のような科長西沢医師の起こした医療ミス事件を契機に、植医師は身に降り掛かった殺人未遂事件を彼自身が糾明する過程で、病院内の複雑でドロドロした人間関係が浮き彫りにされていきます。犯人探しの展開の面白さを中心に展開しながら、欲に溺れ欲と戦いながら生きる悲しい人間のさがを描いています。2014/01/26
ハイク
2
直木賞受賞作品ということで読んだ。下層階級が患者の病院を舞台にした推理小説である。主人公の医師植はだらしなく看護婦の尻を追う個性的な役割を演じている。一方科長の西沢医師は名誉や学閥等を重んじる役割である。読み終わると何故か植医師は憎めない人物だ。また50年前の社会や風俗、下層階級の生きざまを見事に描写している。この辺で直木賞をとったのであろうと推測する。確かに推理小説であるがあまり意識せず、登場人物の個性ある描写が面白い。2013/03/16
kama
1
★★1/2 当時の風俗の描写も面白いし、医療問題では海堂尊に通じるところもあるがミステリーとしては(著者の意図とは別に)未完成な印象。本格好きにとっては惜しい。2014/07/02