感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
旗本多忙
16
読んだのは全集収録の小説帝銀事件。 昭和23年1月に起きた帝国銀行強盗事件を松本清張が小説としたもので、かなりの資料をひもといたのだろう詳しく書かれている。閉店間際の銀行に押し入り、近所で赤痢が発生と偽り、衛生局員に化けた犯人が、行員らに解毒剤(青酸カリ)を飲ませ金と小切手を盗んだ。捜査な末、画家の平沢貞通が逮捕され死刑判決が下る。上告も棄却、しかし39年も死刑囚として収監され、刑の執行もされず獄死。犯人でなければ知らない事を知ってるが、一介の画家に出来る犯罪でもない。軍が関与?謎の事件だ。2019/02/12
mymtskd
8
戦後間もない混乱期に起こった帝銀事件は、70年以上過ぎた今となってはその事件性よりも冤罪の疑い濃厚な事件としての印象が強い。新聞が書き立てる情報によって「やっぱりあやしい」「あの人に違いない」と世論が形成されていく様は、情報のメディアこそ違うが現代のSNSによるバッシングとほとんど同じで昔の話だという気がしなかった。2021/02/02
葉
6
R新聞論説委員の仁科がアンダースンの話を岡瀬と繰り広げるところから物語はスタートする。テンペラ画(生卵の中身を水で溶かせて描いた絵)については全くわからなかったので調べながらこの本を読んだ。新聞社はザラ紙を使うらしいが現実で見たことはない。裁判はやはり難しい。また、その過程で渦巻く脅迫や真相などの考え方は人それぞれ違った角度があると思った。松本清張の感じとは少し違った気がした。2018/06/26
空腹
3
過去に実際に起きた事件の不可解な点を著者が推理し、小説の体を取った物語の中で真相を究明していこうとする、推理小説と呼んでいいのかは微妙な異色な作品。前半の事件パートは良いのですが、後半は裁判での証拠の妥当性などをひたすら検証をするようなパートになっており、小説として読もうとするとなかなか辛いものがあります…。本書のテーマである帝銀事件について予備知識が豊富であれば、面白さもまた違ってくるんでしょうね。2011/04/05
【すとちゃん】
3
タイトルに「小説」と銘打ってあるが、限りなくノンフィクションに近い作品になるのかな?1日13時間にも及ぶ取調べでの自白強要、人相の記憶・筆跡鑑定の曖昧さ、当時のマスコミ報道などなど、裁判員制度が始まり、足利事件の冤罪、「疑惑の銃弾」の三浦氏の自殺があった2009年だけに「人が人を裁くこと」の難しさを深く考えさせられた。2009/07/11