内容説明
処女詩集『山羊の歌』刊行の2カ月前、長男文也が誕生。中原中也は詩作・翻訳に旺盛な活動を続ける。しかし、それは蝋燭の炎が燃え尽きる寸前の輝きに似ていた。彼の詩は、徐々にこの世では聞こえない音を浮かび上がらせるようになる。そして、文也の突然の死。不幸は宿命のように彼の上に舞い降りた…。本書には「亡き児文也の霊に捧ぐ」という言葉とともに、中原中也が最後に編集した詩集『在りし日の歌』全篇と、同時期の代表作を精選。詩人最晩年の活動のすべてを示す。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
新地学@児童書病発動中
131
中原中也の第二詩集。表現は深みを増し、凄みを感じる詩が多くなっている。特に「骨」の死の世界まで突き抜けた表現に圧倒された。第一詩集で見られたような溌剌とした浪漫的な表現は、影を潜めている。それは残念だが、この詩人に生活の重みがのしかかっていたせいだろう。それでも自分の生を正面から引き受けて、生きていこうとする決意を感じる。病気による死さえなかったら、もっと人の心を震わせる詩を書いたに違いない。この詩集を読んで、そのことが残念でたまらなかった。2016/03/17
まふ
110
再読。久しぶりに「さらさらと」というフレーズを想い出し、その詩「一つのメルヘン」が所収されている中原中也の第2詩集「在りし日の歌」を通読した(再読)。僅か30歳の全生涯に魂を打つ珠玉の口語詩を生み出した彼の天才を偲ぶ。他にも私の好きな「月夜の浜辺」「六月の歌」「言葉なき歌」などを読み、しばし懐旧の念に浸る。彼の詩の魅力はその言葉の絶妙な切り取り方と埋め込み方にある、と思う。韻を踏めない日本の近代詩歌という制約の土俵で、彼の詩はリズミックに聞こえるものが多い。これもその魅力の一つである。2024/12/05
つたもみじ
25
詩は、感想が難しい。寧ろ感想を書く…というものでは、ないかもしれない。言葉の流れが心地よい。キラキラとした情景や、夏の暑さ、海には、浪ばかり。美しいけれど息苦しくもなる。危ういほどの繊細さ、不安定さや哀しみに、その感傷に、寒々しさも覚える。それを感じ、浸れる心地よさ。2015/12/30
sashi_mono
10
嘆きの歌から主体の喪失までの推移が読み取れる中也の第二詩集。青春の墓標として、自らの命とひきかえに詩を紡いだ、中也の魂が封じられている。生きることと詩を書くことが分かちがたく結びついた稀有な詩人、それが中也だった。2019/11/23
テツ
6
自分の中に生まれた感傷を咀嚼し言語化し外部の世界に放り出す。詩とはそういうものなので、自分自身が良いと感じた詩が良い詩だと思うのだけれど(好きな詩について好きな理由を説明するなんてとんでもなくナンセンスだよな)中也の詩は自身の感傷を表す言葉のチョイスとそれを並べたときのリズム感が僕はとても好きだなあというだけなんだよな。詩集についての感想って難しい。中也の感傷は美しくてとても好きだ、ということくらいしか言えない笑2015/01/25