出版社内容情報
出先でばったり会ったのは、もうずっと会っていない幼なじみののんちゃんだった。彼女と話すうち、共通の知り合いである中学の同級生だった成井くんに同じ時期に二股をかけられていたことに気づく。勢いで二人は成井くんに電話をかけることになるのだが――。
内容説明
人生ではじめて、街中でばったり知人に遭遇した。「のんちゃんじゃない?」と、今はもうだれも呼ばない愛称で声をかけてきたのは、幼なじみの絵美ちゃんだった。デパートの最上階、特別食堂でガラスの器に盛られた宇治金時を食べながら、私達は時間を取り戻すようにあれこれ話す。そして話題は“同級生の成井君”へと移っていき―。
著者等紹介
山本文緒[ヤマモトフミオ]
1962年神奈川県生まれ。OL生活を経て、87年小説家デビュー。人間関係の繊細なずれから生じる喪失、慈しみをテーマにした作品を描き続ける。『恋愛中毒』で第20回吉川英治文学新人賞、『プラナリア』で第124回直木賞、『自転しながら公転する』で第27回島清恋愛文学賞、第16回中央公論文学賞を受賞。2021年、癌のため逝去(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
凛
21
100何ページに5つの作品の収録された短編集。彼女の作品は必ずしもハッピーエンドではないのに、独特の世界観に引き込まれてしまう。表題作『みんないってしまう』は街中で偶然再会した知人との会話を契機に過去を振り返り、そして失恋した過去、幸せな新婚時代や、子育て、あらゆるものが喪失していくことに気づく話。こんなふうに人間は、終わっていくものとまた新たに手に入れるもので構成されていくのかもと考えさせられた。短いのにどの作品も奥深く読むことができて良かったです。2025/06/24
桜もち 太郎
18
124ページの中に5つの短編が詰まっている。どの作品も少し切なくて、何となく元気になれて、そんな作品たちだった。「みんないってしまう」掌から零れ落ちるように去って行ってしまう。永遠に続くと思っていたもの、失恋、新婚時代、みんな去って行く。「不完全自殺マニュアル」親が死んだら自殺しようと決めていた大学で助手を務める私が、学生と結ばれてしまう。『恥ずかしくて本当に死んでしまいそう』。「片恋症候群」は好きな男のごみを漁る話。『恋は人にプライドを捨てさせる』。「裸にネルのシャツ」は別れた男女。→2025/06/17
iroiro
3
「無人島のふたり」を読んで、本屋で綺麗な表紙の本を見つけて購入。字が大きくて読みやすかった。5つの短編集。どれも好きだけど、「片恋症候群」、好きな人のゴミ袋をあさったり、ストーカーになったり…すごく嫌な事してるけど、最後の言葉、「恋が高尚だなんて嘘だ。好きって気持ちはエゴでしかない。…気持ちが悪いと思われても。一生口をきいてもらえなくても。」には、ドキッとした。主人公は、みんなちょっと屈折していて、そういうところにとても心惹かれる。やっぱり山本文緒さん、とてもいい。2025/06/24
らて
1
上野リチさんのデザインに惹かれて購入した1冊。 特に好きだったのは『不完全自殺マニュアル』 どうせ、とか、私なんか、とか思っているうちは人から自分が軽視されているように思い込でしまい、逆に自分も人としっかり関わっていなかっただけ、、なのかも。 こういう落とし穴って自分の視界が狭まっている時にはきっとハマりやすい。 自分の方から周りを遠ざけていたのかもと気付けたなら、一気に見えていた世界は変わるかも。 彼女はきっと大丈夫! そう思わせてくれる読後感にホッとする。2025/06/30
mini kapi
1
元の短編集も持っているがこれはこれで欲しくなる。独立短編集ではあるが手に取ると最後まで読みたくなるので、これくらいコンパクトになると一層読みやすい。読みやすいのだが、内容は深くて引きずり込まれる。善人でも悪人でもなく誰にでもありそうで、理性では抑えられない感情を、正面から受け止めてくれる一言一句が刺さりまくる。自分のことではないのに、わかるわかると頷き涙しそうになる。何度でも読んでいたい。2025/06/22
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- 和書
- ババァ、ノックしろよ!