出版社内容情報
がらんとした書斎にひとりこもっていると、訪ねてきた三重吉が「鳥をお飼いなさい」と言った。やがて連れてこられた文鳥は、立派な漆塗りの籠にうずくまり、小さくて真白、美しい声でちちと鳴く。真黒な瞳と華奢な足、淡雪の精のような文鳥をじっと毎日観察し、おそるおそる餌をやり世話をしてみたものの、やがてかそけき命は失われてしまい――。
内容説明
がらんとした書斎にひとりこもっていると、訪ねてきた三重吉が「鳥をお飼いなさい」と言った。やがて連れてこられた文鳥は、立派な漆塗りの篭にうずくまり、小さくて真白、美しい声でちちと鳴く。真黒な瞳と華奢な足、淡雪の精のような文鳥をじっと毎日観察し、おそるおそる餌をやり世話をしてみたものの、やがてかそけき命は失われてしまい―。
著者等紹介
夏目漱石[ナツメソウセキ]
1867年、現在の新宿区生まれ。1890年、東京帝国大学文科大学英文科に入学。1895年から96年まで、『坊っちゃん』の舞台である松山中学校で教鞭を執る。1900年9月、イギリス留学出発。1905年、『吾輩は猫である』を俳句雑誌「ホトトギス」に連載。1907年、朝日新聞社に入社。以降、朝日新聞紙上に『三四郎』『それから』『こころ』などを連載。1916年12月9日、胃潰瘍により永眠(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
アキ
89
100分間で楽しむ名作小説シリーズ。文字が大きくて読みやすい。余計な解説もなくてすっきりしている。小説なぞ好きに読めばいいのだ。「文鳥」である。若い頃読んだのか覚えがない。日常に文鳥が現れて、去ってゆく。小説家である私にとり愛着が生じたり、世話が煩わしかったりする存在。そんな日常がプツンと途切れる。そのやるせなさ。鳥籠の中で飼われた文鳥の一生が虚しい。「夢十夜」夢の中での物語は時間の感覚が乏しく、感情を揺さぶられる体験が多い気がする。数年振りの再読。「琴のそら音」漱石らしくない爽やかで愛らしい読後感。2024/12/22
あつこんぐ
29
【文鳥】文鳥を恐る恐る可愛がる漱石先生が可愛いですが、文鳥が死んでしまい「家族が世話をしないから死んでしまった!!」と逆ギレするところはやっぱり夏目漱石だなと思いました。【夢十夜】昔、途中まで読んで挫折したお話。今度はなんとか最後まで読めました。不思議な話は好きなんだけど、やっぱりなんだか読みにくいなぁ。【琴のそら音】「インフルエンザってこの時代からインフルエンザって呼ばれてるんだ」というのが一番の驚きでした。ちょっと怖い話風でしたが、許嫁さんが愛されているというお話でした。 2024/06/09
えつ
6
100分間で楽しむ名作小説シリーズ9作目!いよいよシリーズ完走目前〜!!!今作は表題作「文鳥」と「夢十夜」「琴のそら音」の3つのお話が収録。「文鳥」初めて読んだけど、“文鳥は千代千代と鳴くそうである”と見て、なんか“千代千代”ってオシャレだな。素敵な表現だなって思った。文鳥との触れ合いを微笑ましく見ていたら、後半になって、え!!!となり、夏目漱石まじか…って思った。こんな感じなのね。「夢十夜」も良かったけど、「琴のそら音」が結構好きだったかも。“インフルエンザ”って出てきたときにはとても驚いた。2024/09/28
こまめ
4
装丁に惹かれて買った本📙赤い鳥の三重吉に勧められて飼う「文鳥」て…なかなかのおふざけでは?!!最近いくつか漱石を読んでいるけど時々こういうおふざけというか諧謔(?)を見る気がする…「夢十夜」は再読。「琴のそら音」はなんだか可愛い🐕声の描写が印象的。銀のような、真鍮のような、銅のような笑い声。タイトルの琴はなんだろ、婆さんの名前とか??「児のそら寝」は関係なかったみたい。どれにもちゃっかり死が描かれていてそれが惹きつけられる理由のひとつなのかも。次の漱石は何にしよう🐈⬛2024/12/10
ともりん
1
『文鳥』『夢十夜』『琴のそら音』収録。文鳥ー「鳥をお飼いなさい」と言われ「飼ってもいい」と答える人は生き物を飼ってはいけません。飼うのも世話しなかったことも人のせいは良くない! 夢十夜ー中学の教科書にあった第六夜、懐かしい。今回は第九夜の夫の帰りを待ちお百度参りする女性の話が何とも切なかった。 琴のそら音ーお化け話を聞いた後の夜闇や犬の遠吠えは怖さ倍増。怖い話かと思いきや、婆さんとのやり取りとなんだかんだ言いなりになる靖雄にほのぼのとした気分になり爽やかだった。2025/03/30