出版社内容情報
希和は、小4の息子・晴基が書いた「こんなところにいたくない」というメッセージを見つける。本人に確かめたくても動き出せない希和は、民間学童で働き始めるが――息苦しい日常を生き抜くあなたに贈る物語
内容説明
「こんなところにいたくない」―希和が見つけた短冊は、息子・晴基の字にそっくりだった。“こんなところ”は家なのか学校なのか。知りたい、でも知りたくない。もやもやを抱えつつ、希和は晴基が出入りしている民間学童で働きはじめる。PTA、保護者のLINEグループ、学童で出会う息子の同級生たち、そして夫との関係。ままならない日々の中、希和は自分の声を探し続ける。呼吸することが少し楽になる、あなたのための物語。
著者等紹介
寺地はるな[テラチハルナ]
1977年佐賀県生まれ。2014年『ビオレタ』で第4回ポプラ社小説新人賞を受賞し、同作でデビュー。21年『水を縫う』で第9回河合隼雄物語賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
みこちゃん
60
自分の気持ちを言葉にして、誰かに伝え理解してもらう作業は人として生きていく上ではとっても大事なこと。でもその行為が心地よくあることは稀で、誤解や誹謗中傷の的になりがちなご時世。角が立たぬよう、自分を守るために言葉を飲み込み、微妙な笑顔でやり過ごし、結果として後悔して自己嫌悪に陥ることも。子供達の学校行事や懇談会での保護者の集まりが嫌で仕方なかったのが今では懐かしい。子供の評価がまるで自分の評価のように感じてたあの頃、この本に出会いたかった。またまた寺地さんに感謝です😊2024/09/28
たるき( ´ ▽ ` )ノ
38
うわ、刺さる。共感もするし、自分が責められてる気持ちにもなる。なぜ自分の子どもにイライラしてしまうのか。自分の思い通りにしようとして、そうならなくて苛立ち、苛立つ自分の情けなさに押し潰されそうになる。どこまで何をしたらいいのか、わからなくていつも不安。ああ、自分だけがこんな思いを抱えているわけではないのだ。これでいいんだ。まるごと認められたような気持ちになれた。2025/04/27
mayu
29
家事や育児を妻に任せっきりの旦那、何を考えているかわからない息子や息子の学校での他の親との距離感にモヤモヤした気持ちを抱える希和。彼女の中にはちゃんと言葉があって、感じている事もあるけれど感情を言語化する事が難しい。そう感じながら、周りの目も気になりながら、自分の言葉を持ちたいと少しずつ言葉を伝えようとする希和の姿に心が震える。「がんばりすぎないでね」という言葉がなんの救済にもなっていないって、確かになぁって思った。子育てや夫や子供の学校に悩んでいる沢山の人の救いになる様な一冊だと思う。2024/08/31
よっち
28
小学四年生の息子・晴基とそっくりの筆跡で書かれた切実なメッセージ。本人にも聞けず周囲にも相談できなかった母親の希和が、学童で働きはじめる物語。意思疎通がなくなっていた夫や噂話が大好きなママ友たちを相手に、いつの間にか自分が言いたいことも言えなくなっていた彼女でしたけど、それは必ずしも何も考えていない、思っていないわけではないですよね。マイペースな経営者・要や子供たちに振り回されながら働く中、自分の思うことや言いたいことを思い切って伝えるようになって、少しずつ変わってゆく周囲との関係もなかなか良かったです。2024/08/24
タルシル📖ヨムノスキー
26
これは無神経な私と繊細で傷つきやすいあなたのための物語。噂話からLINEグループでの誹謗中傷、空気を読み安易にそれに同調する人たちの圧力。主人公の希和は自分の気持ちをなかなか言葉にできない。といっても何かの障害などがあるわけではなく、あれこれ考え込んでしまうタイプの女性。彼女は民間の学童保育のスタッフとして働くことで少しずつ自分の意見を口にできるようになるという心の成長物語。そんな希和の成長より心に残ったのは希和の夫の言動。多分妻がこの本を読んだら「コレはあなたのことよ!」と言われそうでとても怖い。2024/09/14