出版社内容情報
思春期の出来事を機に真以に心を寄せる葉だったが、真以は脱獄犯の男と共に逃亡、姿を消してしまう。20年後、ネット上で真以を見つけた葉はたまらず会いに行くが――。現代を生きるすべての女性に贈る物語
内容説明
精神的に不安定な父を支える母と離れ、祖父母の住む島に1人やってきた小6の葉。島の子に携帯電話を取り上げられた葉を救ってくれたのは、同じく祖父と暮らす真以だった。急速に近づく2人だったが、島に逃亡してきた脱獄犯と共に真以が逃げたことで、葉は裏切られたように感じる。20年後、偶然ウェブ上に真以の写真を見つけた葉は、会いにいくことを決意するが―現代を生きるすべての女性に贈る物語。
著者等紹介
千早茜[チハヤアカネ]
1979年、北海道生まれ。立命館大学文学部卒業。小学生時代の大半をアフリカ・ザンビアで過ごす。2008年『魚神』で第21回小説すばる新人賞を受賞しデビュー。09年同作で第37回泉鏡花文学賞、13年『あとかた』で第20回島清恋愛文学賞、21年『透明な夜の香り』で第6回渡辺淳一文学賞、23年『しろがねの葉』で第168回直木賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
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クプクプ
86
瀬戸内海が舞台の、少女から大人にかけての女性ふたりが主役の物語。私も30代の頃、瀬戸内海を車で、一人旅をした経験があるので、読んで、海も島も映像が浮かぶようでした。島の因習を背負った真衣と、小6で東京から島へ引っ越してきた葉(よう・女性)。自然は豊ですが、島の人間関係は閉鎖的で葉は、上手く生きれない。それを真衣が助けてくれます。そこへ、脱獄囚の男性がふたりの関係を崩します。二部構成で、第二部は、大人になった葉と真衣、そして、脱獄囚の話へと展開。千早茜さんの毒と語彙が化学反応を起こして味わい深い一冊でした。2025/09/19
茜
56
ひきなみ。。。聞いたことがあるようでどんなことなのかと思ったので調べてみたら「船が航行時に後ろにできる波」のことだった。飛行機雲みたいなもの。ストーリーは2部に分かれて書かれていて1部は少女時代、2部はその20年後。読んでいて目が潤んでしまった箇所が何カ所かあったけれど、何だかとても大切なことを思い出させてくれるようなストーリーでした。きっと世界で一人でも自分を肯定してくれる人がいれば、それだけで人は強くなれると教えてくれているような気がしました。2025/02/10
ざるこ
34
ゆらゆらと揺れる電車、瀬戸内の青緑色の海。透明感のある文章は1頁目から優しい読み心地。瀬戸内海の小さな島に預けられた葉と他人と距離を置く真以。島の閉塞感と男尊女卑の祖父母や島民たち、差別的な噂、親は不在。変わりゆく体に追いつかない心。自分の気持ちが親の機嫌に左右されるのは自信の喪失に繋がると思う。そういう子供時代の経験から真以との関係にも自信が持てないし、パワハラ上司にも向き合えない。真以や児玉と再会しそれぞれの感じ方、切り取り方があって当然なのだと受け入れる。年月を経て寄り添う2人の姿がとても美しい。2024/08/18
よっち
33
小学校最後の年を過ごした島で葉が出会った少女・真以。しかし彼女は突如姿を消してしまい、ずっと気に掛けていた真以を見つけた葉が彼女に会いに行く物語。ずっと一緒だと思っていたのに、突如脱獄犯と一緒に島から消えた真以。衝撃的な事件が尾を引いて、大人になっても自信喪失気味でパワハラに身も心も限界を迎えかけていた葉。たまたま再会した彼女から過去の真相を明かされ、戸惑いながら向き合おうとする葉が、それを機にこれまで受け身で目をそらして逃げるばかりだった現実を、少しずつでも変えていこうとするその姿が印象的な物語でした。2024/07/26
mayu.
29
瀬戸内海のちいさな島に住む祖父母の家に預けられた小学生の葉と隣の亀島に祖父と2人で暮らす真以の物語。親から離れ暮らす事情はそれぞれだけど、こういう物語を読むとどうしても子供は親を選べないという言葉を強く感じてしまう。抗えども、負いかぶさってくる重圧に潰れそうになる。大人になった第二章の葉が働く会社の男性部長の女性というだけで気に障り繰り返し振りかざす悪意が苦しくて、しんどくて、本を閉じてしまいたくなる。互いの存在が海にかかる虹であり、光だった2人がこの先明るい方向へと進んでいきますようにと願う。2024/07/28
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- WOLVES HAND 第5話