出版社内容情報
精神科医の象山は家族を愛している。だが彼は知っていた。どんなに幸せな家族も、たった一つの小さな亀裂から崩壊してしまうことを――。やがて謎の薬を手に入れたことで、彼は人知を超えた殺人事件に巻き込まれていく。
謎もトリックも展開もすべてネタバレ禁止!
前代未聞のストーリー、尋常ならざる伏線の数々。
多重解決ミステリの極限!
内容説明
精神科医の象山は家族を愛している。だが彼は知っていた。どんなに幸せな家族も、たった一つの小さな亀裂から崩壊してしまうことを―。やがて謎の薬を手に入れたことで、彼は人知を超えた殺人事件に巻き込まれていく。
著者等紹介
白井智之[シライトモユキ]
1990年千葉県印西市生まれ。東北大学法学部卒。2014年に『人間の顔は食べづらい』が第34回横溝正史ミステリ大賞の最終候補作となり、同作でデビュー。16年に『東京結合人間』で第69回日本推理作家協会賞(長編及び連作短編集部門)候補、17年に『おやすみ人面瘡』で第17回本格ミステリ大賞(小説部門)候補、23年に『名探偵のいけにえ 人民教会殺人事件』で第23回本格ミステリ大賞(小説部門)受賞、「2023本格ミステリ・ベスト10」第1位獲得(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
starbro
411
白井 智之は、新作をコンスタントに読んでいる作家です。 本書は、象頭遡行パラノイア・ミステリでした。好き・嫌いが二極化すると思われます。個人的には・・・ 🐘🐘🐘 https://store.kadokawa.co.jp/shop/g/g322306000038/2023/11/02
青乃108号
390
この著者の頭脳はどういう構造になっているのか。複雑に分岐する物語を緻密に作り上げ、そこで行われるどう見ても不可能に思える殺人事件の、(なにしろ普通に歩行中の娘が突然爆発するのだ、そこに爆弾も銃弾も存在しないのに。)真相たるや、張り巡らされた伏線と分岐した物語のそれぞれの関連性が複雑に絡みあって初めて可能になるものであって、こんなの考えつく白井の頭脳はもはや人知を超えている。あまりに複雑すぎて理解が追い付かないので、じっくり時間をかけて読み込む必要あり。しかも最後の絶望的な状況たるや、想像するだに恐ろしい。2024/01/21
夜間飛行
367
この作者としてはグロ控えめ、とはいえ変態性と背徳性はかなりのもの。ネタバレせぬよう内容には触れないが、特殊設定により人の意識そのものが謎であり罠である。要するに登場人物の意識を介して受け止めた小説世界が何度もひっくり返される。それもメビウスの輪のようにしれっと反転し、前の記述を裏切らないのが凄い。変わり目では一瞬何が起きたのかわからなくなる。後半に入って推理に参加する頃には、人の意識を信用しちゃダメというルールが読者にちゃんと共有されている。ただしロジックが余りにも煩瑣でついていくしかないのは残念だった。2024/02/05
パトラッシュ
366
SFミステリは数あれど、時間SFとの組み合わせは聞いたことがない。しかもパラレルワールドの概念を導入してタイムパラドックスが起こらない設定にしたので、その点をわかってないと意味不明。そんな世界で亀裂の入った人生を修復しようと奔走するサイコパス医師が、あちらを修繕すればこちらが壊れる事態を繰り返すうちに収拾がつかなくなっていく。人が爆発したり生きる時間の異なる複数の自分と対話するなど、ノーマルなミステリ愛好者には邪道の山だ。そこに論理の筋を通そうとする作者の意図は買うが、読者のどれだけが正確に理解できたか。2024/03/25
stobe1904
276
【このミス2024第4位】精神科医でサイコパスの象山は、ふとしたことで苦境に陥り、愛する家族を守るため、状況を打開すべく時間を遡及できる謎の薬物シスマに手を出してしまう…。特殊設定+多重解決の建付けに翻弄され、頭の中がカオスになりながらも途中でやめられず読み切ってしまった作品。独特の世界観の中、パズラーを極めた異色で素晴らしいミステリだった。ランキング上位も納得。★★★★☆2024/01/13