出版社内容情報
仏画、絵巻、浮世絵――美に魅了された人々の営みを描いた歴史小説集
六十路を越した老境の絵師・喜平治(宮川一笑)は、肉筆美人画の名手・菱川師宣の曾孫である姉弟と知り合う。絵描きを志す弟の伊平の面倒を見ることになった喜平治は、幼いながらも確かな筋の良さに感嘆するが、折しも町絵師の宮川一門と表絵師の狩野家の間で諍いが起きてしまい……。(表題作「しらゆきの果て」)
鎌倉、戦国、江戸、幕末
時代と歴史を超えて、
人々を狂わせ、神仏さえも惑わせる、
あらゆる「美」の真髄を描く5つの物語
装画/原裕菜
装幀/長崎綾(next door design)
内容説明
絵師の一念、憂き世を晴らす。仏画、絵巻、浮世絵。美に魅了された人々の営みを描いた歴史小説集。
著者等紹介
澤田瞳子[サワダトウコ]
1977年京都府生まれ。同志社大学文学部文化史学専攻卒業、同大学院博士前期課程修了。2011年、デビュー作『孤鷹の天』で第17回中山義秀文学賞を最年少受賞。12年『満つる月の如し 仏師・定朝』で第2回本屋が選ぶ時代小説大賞ならびに13年に第32回新田次郎文学賞受賞。16年『若冲』で第9回親鸞賞受賞。20年『駈け入りの寺』で第14回舟橋聖一文学賞受賞。21年『星落ちて、なお』で第165回直木三十五賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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starbro
163
澤田 瞳子は、新作中心に読んでいる作家です。 本書は、絵師に纏わる連作短編集、オススメは、『さくり姫』&表題作『しらゆきの果て』です。 https://www.kadokawa.co.jp/product/322305000748/2025/03/28
パトラッシュ
142
歴史に残る著名人や出来事は、強烈な光源のようなものだ。輝く光に目を眩まされてしまった庶民にとっては、人生を左右しかねない大事件といえる。頼朝の妹に松永弾正、東福門院和子らにとっては些細な話であったろうが、仏画や浮世絵など美術を生業としていたため関わった者にとっては心深く刻まれることになった。絵師階級の身分制度や廃仏毀釈令といった政治の理不尽がのしかかって来た時、美に心を奪われていたため黙って受け入れられなかった。そんな人だからこそ譲れない意地や怒りが、思いがけず秩序を破壊するほど爆発する一瞬を捉えている。2025/03/03
hiace9000
126
五短編は鎌倉から幕末までの市井に生き、筆を執った絵師らの営みを描く。美に魅せられた絵師、また取り巻く人々の胸の内のわだかまりや義憤を、まるで顔料を砕くように、そして胡粉を細密に摺るような丹念さで溶き、筆に乗せゆく様は、さすがの名手・澤田さん。読み手が時代小説に求める慎ましやかで奥深く、豊かで繊細な味わいー、それを日本画の醸す静謐さと精緻にして淡やかな色合いと重ね合わせるかのよう。馥郁たる余韻を読み手の心に届ける、それぞれの短編を締めくくる最後の一文の美しさは、ため息が漏れるほど見事なる職人芸である。2025/03/20
のぶ
88
澤田さんの時代小説の世界を堪能した。5つの物語が収められていて、時代は平安時代から江戸時代まで様々。共通するのは絵画の世界に魅了された絵師を主人公にしている事。どの話も絵に対しての情熱が伝わって来る。登場人物の描写も秀でていて、さすがだと感じられた。澤田さんの本はずっと読んできているが、本作も良かった。2025/02/18
はにこ
75
澤田さんらしい作品。絵師のこと書かせると最高ですね。絵師に全く詳しくないので、こういう絵師たちがいたということを知らなかった。様々な時代に生きてきた絵師を知ることができてよかった。短編だから記憶に残りにくいかもしれない。それがちょっと残念。またいつか読み直したいと思った。2025/03/26