出版社内容情報
老舗料理屋のひとり娘である14歳の真阿は、胸を病んでいると言われて以来、部屋にこもりがちだ。店に、有名な幽霊絵師・火狂が居候することになる。大柄で悠然とした火狂は、人には見えないものが見えるようだ。彼のもとには、絵に関する奇妙な悩みを持つ客が訪れる。犬の悪夢に怯える男、「帰りたい」という声に悩む旅人、手放しても戻ってくる絵――火狂と真阿は、その謎を解き明かしていく。静かな感動を誘う絵画ミステリ。
内容説明
料理屋のひとり娘である真阿は、病弱で部屋にこもりがちだ。そんな中、有名な幽霊絵師・火狂が店に居候することになり、真阿は彼を訪ねて話をするようになる。大柄で悠然とした火狂は、人には見えないものが見えるようだ。彼のもとには、絵に関する奇妙な悩みが集まってくる。犬の悪夢に怯える男、「帰りたい」という声に悩む巡礼者、手放しても戻ってくる絵―2人は、その謎を解き明かしていく。熱く静かな感動を誘う絵画ミステリ。
著者等紹介
近藤史恵[コンドウフミエ]
1969年大阪府生まれ。大阪芸術大学文芸学科卒業。93年『凍える島』で第4回鮎川哲也賞を受賞して作家デビュー。以来、細やかな心理描写を軸にした質の高いミステリ作品を発表し続ける。2008年『サクリファイス』で第10回大藪春彦賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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moonlight
44
維新から10年後ほどの大阪、江戸時代の名残濃い中に新しいことが少し入り込んできている不安定な時代ならではの雰囲気。幽霊が見え、怖い絵ほどよく売れる幽霊絵師の火狂と、絵の念を感じ取って夢に見る少女の真阿が、一枚の絵から隠れた事件の真実を明らかにしていく。火狂と真阿、どちらも特殊能力を持っているので謎解きには都合が良すぎると言えばそうなのだが、人間の悲しみと向き合いながら真実に迫っていくふたりのやり取りがとても温かくてしみじみ良い。シリーズになりそうかな?2024/10/29
Y.yamabuki
25
不思議な夢を見る料理屋の娘真阿と見えないものが見える居候の火狂。二人が持ち込まれる絵に纏わる奇妙な謎を解いていく。解かれた謎は悲しいものが多いが、依頼主は平穏を取り戻す。この年の離れた二人の関係がいい。火狂はまたふらりといなくなってしまうかもしれないけれど、思い出は真阿の心の奥にしまわれて、彼女も羽ばたいていくように思う。全体的に少し物足りない気もするが、不思議話はこのくらいがいいのかもしれない。 2024/06/23
よきりん
15
近藤さんの時代小説。すらすらと読みやすく、明治初期の大阪へタイムスリップできました。怪奇な世界とミステリーの掛け合わせが絶妙。主役の二人の距離感も心地良く描かれている。8編の物語はどこか切なく悲しいが、そればかりではなく、真阿の成長に明るい未来を感じさせる強さも含まれていた。今年のゴールデンウィーク、この一冊で十分楽しめました。2024/05/10
練りようかん
10
明治時代の大阪・新町。病気を理由に閉鎖的な生活を送る娘にとって居候の絵師は外の世界を知る道だ。悪夢を見せる絵、何度も戻ってくる絵、持ち込まれる絵は何を訴えているのか怪奇と謎を解き明かしていくストーリー展開で、近藤さんらしいゾワっとブラックホールに突き落とされたイメージがわく話、そこから這い上がって新しい景色が見え良かったね話もあって楽しめた。ホームズ&ワトソンの関係を予想した二人が、それとはまた違う関係性になっていくのが好みだった。「荒波の帰路」と「悲しまない男」は対をなす二編に思えて特に面白かった。2025/02/20
陽ちゃん
10
大阪の料理屋しの田のひとり娘真阿は胸を病んでいるからと外へ出ることを禁じられ、寝込みがち。ある時、しの田に幽霊絵で有名な火狂が居候することになり、二人で火狂の元には持ち込まれた幽霊絵の謎解きをすることになりますが、怖いというよりは、幽霊に寄り添う真阿の目を通して彼らの無念が伝わってきて、上手く解決したときにはほっとさせられました。2024/04/17