出版社内容情報
古野 まほろ[フルノ マホロ]
著・文・その他
内容説明
A県の小学校で起きた前代未聞の無差別大量殺人。犯行後、犯人の男は居合わせた警官から奪った拳銃で自殺する。現役警官である男の父もまた、直後に自死。県警本部は混乱の坩堝と化した。謎多きこの事件の解明に乗り出したキャリア女警の由香里は、捜査の末、驚きの真実を見つける。ベテラン警察官達の矜持と保身、組織の理不尽と世間の無情、引きこもりとその家族の実情―数々の問題提起を孕んだ社会派警察ミステリー。
著者等紹介
古野まほろ[フルノマホロ]
東京大学法学部卒業。リヨン第3大学法学部第3段階「Droit et Politique de la S´ecurit´e」専攻修士課程修了。フランス内務省より免状「Dipl^ome de Commissaire」授与。なお学位授与機構より学士(文学)。警視庁1種警察官として交番、警察署、警察本部、海外、警察庁等で勤務の後、警察大学校主任教授にて退官。2007年、故・宇山日出臣氏に絶賛され、『天帝のはしたなき果実』で第35回メフィスト賞を受賞しデビュー。有栖川有栖、綾辻行人両氏に師事(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ばんだねいっぺい
30
元・警察組織の一員だった小説家の中でも独特の視座がある気がする。左を見ても、右を見ても警察という感覚の小説。2022/09/20
海燕
11
これまでに読んだ警察小説の中で、白眉といってよいのではなかろうか。「老警」とは地味なタイトルだが、読み進むにつれてその含むところが見えてくるのは味わい深い。著者の少しクセのある文体は好みが分かれるようだが、私は苦にならない。どころか、独特の妙味を醸して彩りを添えていると思う。小学校での無差別殺傷事件を軸に進むが、引きこもり、警察の保身といった社会問題、キャリア女警や定年間近の刑事の正義感などで最後まで読ませる。この著者が、これほどに哀しく美しいラストを用意するとは!と感嘆。文庫だがサイン本を入手して。2022/09/25
coldsurgeon
9
物語の結末は、あるべき社会のために重要なことを闇の中に落とし込んでしまうような感じだ。「引きこもり」は、様々な要因で生じており、社会問題化している。しかし、解決の糸口はなかなか見つからず、行政の手も行き届かない。この物語に描かれるような拡大自殺を目論んだ無差別事件が起きうるだろうが、そこに組織の闇が介入すると、事件は複雑化し、多面化することが分かる。弱者の物語を、強者が自由に上書きすることが可能であることは、現実社会をみてみれば、明らかだった。すべて不可解なことには理由があるが、可視化されることはまれだ。2022/09/04
TAMA
8
2022年65冊目。2022/10/31
himanaka
4
主人公が、警察的思考で、論理的に事件を推理していくところなど、実に面白い。面白いんだけど、希望がなさすぎるのは辛い。2023/02/21