出版社内容情報
九州の静かな港町で叔母と暮らす17歳の少女、岩戸鈴芽。
ある日の登校中、美しい青年とすれ違った鈴芽は、「扉を探してるんだ」という彼を追って、山中の廃墟へと辿りつく。
しかしそこにあったのは、崩壊から取り残されたように、ぽつんとたたずむ古ぼけた白い扉だけ。
何かに引き寄せられるように、鈴芽はその扉に手を伸ばすが……。
やがて、日本各地で次々に開き始める扉。
その向こう側からは災いが訪れてしまうため、開いた扉は閉めなければいけないのだという。
―――星と、夕陽と、朝の空と。
迷い込んだその場所には、すべての時間が溶けあったような、空があった―――
不思議な扉に導かれ、すずめの“戸締まりの旅”がはじまる。
新海誠監督が自ら執筆した、原作小説!
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- 評価
COSMOS本棚
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
海猫
349
新海誠作品は小説も映画も「君の名は。」からなので、それ以前の作品ことはわからない。前2作は隠し味的に伝奇風な設定があったが、今回は全面に押し出してきた感じ。高校生のヒロイン・鈴芽が展開上、日本国内をあちこち巡るのでロードノベルの味わいが強い。言葉選びが繊細で情景描写が良く、旅情漂う。各地で出逢う人々も個性的。廃墟的な土地も沢山出てくるので哀愁がある。また人や場所を「匂い」で表現しようとする姿勢が印象に残った。日本人にとって重い現実がテーマとしてあるが、作品のイメージは爽やかである。アニメ映画もぜひ観たい。2022/08/28
ひさか
281
2022年8月角川文庫刊。書き下ろし。鈴芽と草太の6日間の冒険とその後日譚。のっけから別の世界への扉が登場して、鈴芽が、扉を閉めるダイナミックな展開は、シーンが目に浮かぶようです。封印とか、要石というアイテムの使い方も面白い。以降このハイテンションなノリでの展開は楽しく、面白かったです。東日本大震災をイメージさせるシーンがあり、ここはムズかしいものをもってきてるな〜と思いました。記憶がまだ生々しいので一気に現実世界に戻ります。2022/12/10
かんけー
260
読了♪ヒロイン鈴芽はとある朝、登校途中草太と言う青年に「このあたりに、廃墟はない?」と聞かれ、曖昧な返事で対応するも?草太はあっさりとお礼を言い立ち去る。物語はこの二人を軸に「戸締まり」と言うキーワードを巡り、奇想天外な展開を見せる。まだ映画公開迄1ヶ月以上有るのでネタばれ厳禁つう事で、鈴芽のその行動力のアグレッシブさに目を見張る(^_^;)良い意味でポジティブであると♪新海監督らしい時事ネタも挿入され、エンターテイメントとして完成度は高いと(⌒‐⌒)映画公開が楽しみです♪面白かったです("⌒∇⌒")♪2022/09/22
koji
230
パンドラの箱が開いたように、次々に災害が起こる日本。大切な人と死に別れた「生きている人たち」の哀しみはどう癒やされるのか。東日本大震災から10年以上たっても問いは続きます。地上波放映されたこの作品のアニメを観て、新海誠という作家の想像力の中に一つの答えをみつけました。主人公の鈴芽が、数々の苦難の最後に、要石をミミズの体に振り下ろし、災厄を閉じ込めた後、震災直後、母を探す幼い鈴芽にこう言葉をかけます。「未来なんて怖くない。今は真っ暗闇でもいつか朝がくる。」だから生き続けなさいと。勇気を貰った素晴らしい作品2024/12/15
芳樹
225
『君の名は。』は隕石落下。『天気の子』は大雨。前二作は自然災害が絡むエピソードでしたが本作は?本作も新海氏の心に強く残っている自然災害がモチーフになっています。なぜ『扉』が開いて災いが訪れるのか。人の思いが土地を鎮めているから人がいなくなると重しが無くなるという解釈は、心にすとんと落ちました。主人公の鈴芽が、とある美しい青年と運命的(必然?)に出会い、『扉』を締めるべく日本を旅する物語。道中出会う人たちとの交流を通じて、彼女が心に抱える重しを解き放っていく成長物語でもありました。映画が楽しみです。2022/09/17