出版社内容情報
「もみじ時雨」……山本一力
「駆け落ち」……諸田玲子
「痛むか、与茂吉」……澤田瞳子
「粒々辛苦」……宇江佐真理
「逢対」……青山文平
「平蜘蛛の釜」……山本兼一
内容説明
江戸の海産物問屋で奉公する与茂吉は、上方へ旅立つ女将のお供を申しつけられた。与茂吉には主から命じられた仰天の使命があった(「痛むか、与茂吉」澤田瞳子)。駆け落ちで結婚した真之介とゆずの夫婦は、2人で道具屋を始めた。高杉晋作からの預かり物を新撰組に売ってしまったことで、夫婦は窮地に立たされる(「平蜘蛛の釜」山本兼一)。それぞれが求める幸せとは。苦楽を分け合う夫婦を描いた選りすぐりのアンソロジー。
著者等紹介
末國善己[スエクニヨシミ]
1968年、広島県生まれ。文芸評論家。明治大学卒、専修大学大学院博士後期課程単位取得中退。時代小説・探偵小説のアンソロジーを多数編む(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
いつでも母さん
155
夫婦と商売がテーマのアンソロジー6話。既読の作品もあったが夫婦色々、商売あれこれ、どれも良い。どんな困難もあなたと一緒なら・・かぁ。実家が長く自営業だったので、24時間何十年も一緒にいる両親を見てきた。人を使う難しさも知っている。良い時ばかりじゃない。それでもなお夫婦であり続けた両親は偉かったなぁ。ふとそんなことを思ってしまった。本作は商売を通して見えるもの、夫婦だから感じるものが好い。女の見事さの方が印象に残る感じではあったが(笑)2022/04/29
おしゃべりメガネ
128
名だたる時代小説の名手が名を連ねるアンソロジーで、テーマは'夫婦'と'商い'です。今さらながら初読みの作家さんばかりで、存分に楽しませてもらいました。男性三人、女性三人と読みましたが、個人的に女性作家さんの作品がどれも印象的でした。澤田さん、諸田さんは改めて他の作品を読みたくなりましたね。数多くあるので、何から読んでいいのか悩んでしまいますが。本作には6組の様々な夫婦が登場します。どの作品もとにかく奥方が凛としている姿に惹かれます。夫婦それぞれに色んな歩みがあるんだなと、深く考えさせてくれる作品でした。2022/04/12
タイ子
87
6人の作家がそれぞれに異なる商売に於いて夫婦が築く絆と商売の難しさ、楽しさを6者6様の形で味わえるのでどれもさすがと言えます。諸田さんの「駆け落ち」はラストに見せる人が辿る命運の違いにため息。宇江佐さんの「粒々辛苦」は「口入れ屋おふく」からの一遍なのだが、他のアンソロジーでもおふくさんが取り上げられてた記憶があり、いかに一つの作品に宇江佐さんの魅力が詰まっているのか改めて知る。口入れ屋のおふくさんが女中の仕事で他家に入りその家の実情を垣間見て人生を学ぶという話。青山さんの「逢対」は何度読んでもいい。2022/04/14
じいじ
86
6篇どれも粒揃いで面白かった。澤田さんは直木賞作家なのに初読みです。筋立てがが上手なので、もう1・2作読んでみたい作家です。宇江佐さんの【粒々辛苦】は既読でしたが、さすが安定した読み易さでいうことがありません。私のイチ押しは、山本一力さんの【もみじ時雨】です。「女将さんでもってる店」と評判の履物屋・オシドリ夫婦の物語。結婚してから18年目に念願の赤ちゃんが…。一時夢中で読んだ一力さんのほっこり心が和む「夫婦の物語」を、また読みたくなりました。2022/04/27
しゃが
64
山本一力・諸田玲子・澤田瞳子・宇江佐真理・青山文平・山本兼一が揃った時代小説のアンソロジー。江戸の町、夫婦と商売に絡んだ人生模様が描かれ、悲喜交々の夫婦の形はあるが、女性たちは強くもあり、健気でもあった、そしては働き者だった。物語は切ないもの、クスっとするものバラエティーに富んでいて、娯楽小説集で、文庫本の良さが詰まっていた。2022/05/01