出版社内容情報
扇野藩は破綻の危機に瀕していた。中老の檜弥八郎が藩政改革に当たるが、改革は失敗。挙げ句、弥八郎は賄賂の疑いで切腹してしまう。残された娘の那美は、偏屈で知られる親戚・矢吹主馬に預けられ……。
内容説明
扇野藩は度重なる災害により破綻寸前の危機に瀕していた。藩主の千賀谷定家は困難を脱するために郡代の桧弥八郎を中老に抜擢、藩政改革にあたらせた。しかし、厳しい年貢の取り立ては農民の離村を招き、果てに弥八郎は賂の疑いで切腹してしまう。娘の那美は偏屈で知られる親戚の矢吹主馬のもとに身を寄せるが、彼には生前の弥八郎から託された、ある使命があった。悪に屈せず、信念を貫いた武士を描く、清廉極まる時代小説。
著者等紹介
葉室麟[ハムロリン]
1951年、北九州市小倉生まれ。西南学院卒業後、地方紙記者などを経て、2005年、「乾山晩愁」で歴史文学賞を受賞しデビュー。07年『銀漢の賦』で松本清張賞を受賞し絶賛を浴びる。09年『いのちなりけり』と『秋月記』で、10年『花や散るらん』で、11年『恋しぐれ』で、それぞれ直木賞候補となり、12年『蜩ノ記』で直木賞を受賞。16年『鬼神の如く―黒田叛臣伝―』で司馬遼太郎賞を受賞。2017年12月、惜しまれつつ逝去(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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優希
51
一本の筋の通った作品でした。悪に屈することなく信念を貫くそれぞれの姿が気持ち良いです。爽やかな時代小説でした。著者最後の作品だと思うと残念でなりません。2023/02/02
てつのすけ
32
武士とは、利益に左右されない存在だ。現代ならば政治家だろう。本書もそうだが、葉室さんの作品は、多くの政治家に読んでもらいたい。2021/10/03
のびすけ
22
かつて家老たちの策略で切腹させられた檜弥八郎の意志を継ぎ、扇野藩の藩政改革を推し進めようとする矢吹主馬と檜慶之助。藩政改革の要である藩札発行は果たして成し遂げられるのか。敵対していた主馬と慶之助の関係性の変化と、二人の凄まじいまでの覚悟。主馬を慕い心から案ずる那美が凛として美しい。葉室先生が描く清廉な武士の矜持は、いつも襟を正す気持ちにさせてくれる。2024/03/30
kuma
19
財政破綻の危機にある扇野藩の中老・檜弥八郎は藩政改革を進める中、賂の疑いで切腹させられる。弥八郎の娘・那美を預かることになった親戚の矢吹主馬は否応なしに那美の兄と共に藩政改革に巻き込まれていく。陰で画策する家老や利を得ようとする商人達との策を巡らす戦いは読み応えがあった。弥八郎の使命を引き継いだ主人公・主馬の、武士としての覚悟、年貢の取り立てに苦しむ百姓を思う気持ちと人間としての気高い精神はグッと胸にきた。人の成長していく姿や那美の言葉に感動!扇野藩シリーズ「散り椿」に並ぶ著者らしい素晴らしい作品です✨2021/10/23
Mori
15
葉室さんの作品は、手に取るまでは覚悟がいるものの、読み始めるとのめり込んでしまう。武士という生き方に憧憬と畏怖の念を覚える。2022/01/24