内容説明
昭和のはじめ、瀬戸内海べりの一寒村の小学校に赴任したばかりの大石先生と、個性豊かな12人の教え子たちによる、人情味あふれる物語。分教場でのふれあいを通じて絆を深めていった新米教師と子どもたちだったが、戦争の渦に巻き込まれながら、彼らの運命は大きく変えられてしまう…。戦争がもたらす不幸と悲劇、そして貧しい者がいつも虐げられることに対する厳しい怒りを訴えた不朽の名作。
著者等紹介
壺井栄[ツボイサカエ]
1899年、香川県小豆島生まれ。小説家・童話作家。『母のない子と子のない母と』など、郷土愛と人間愛にあふれた温かい作品を多く残した。1967年、67歳で死去(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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紀伊國屋本棚
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
kaizen@名古屋de朝活読書会
166
四十年ぶりに拝読。もっと暗く、もっと読みにくく、もっと内容が分からないと思い込んでいた。著者が、小豆島生まれで、実際の生活体験に基づいた話だから、小豆島に根ざした物語が書けたのだろう。一人一人の人生は、苦しく悲しいものが多い。大石先生の軟弱そうだけど自分の考えを持とうというところが、ほのぼの感を出すのかも。十二人の生徒の瞳の数は二十四。同窓会に集まった瞳の数は激減。解説の小松伸六によるとp268「内気だが天性のえくぼと楽天性があった」2013/10/14
真香@ゆるゆるペース
135
再読。学生の頃から好きで繰り返し読んでいる作品。小豆島の辺鄙な漁村の小学校に赴任した新米の女教師、大石久子先生(おなご先生)と12人の教え子達との交流を描いた物語。戦争がもたらす不幸と悲劇、貧しい者が虐げられることへの怒りを訴えた不朽の名作。厳しい時世の中、教え子達は各々過酷な境遇や試練を経験しつつも運命を受け入れ、ひたむきに生きていく姿がとても眩しく印象的だ。やはり戦争は誰一人として幸せにせず、大切なものを奪っていくものだと改めて感じさせられた。最後の同窓会のシーンは、万感胸に迫るものがある。2020/05/28
いっせい
76
お恥ずかしいながら初読です。小豆島のはずれの岬の村に赴任した女先生。本村から毎日8キロ、自転車で通勤し、学校で出会った12人の少年少女との交流は、ユーモアもあって、明るい。しかし、戦争が、その後の彼らの人生に暗い影を落とす。長い戦争をくぐり抜け、最後に同窓会で再会を果たす先生とその教え子達。戦争さえなければ・・と思わずにいられませんでした。2022/06/27
馨
76
反戦色の強い作品ですし、個人的に「?」と思う部分もありましたが、戦争はあってはならないというメッセージも伝わりやすい内容なので学校で習うのは納得です。先生と生徒らが戦争を経て月日が経ってもなお強い絆で結ばれているのは良いですね。2014/10/15
saga
70
昭和初期から、日本が帝国・軍国主義に突き進む中、瀬戸内の寒村の尋常小学校・分教場に赴任した新任教師と12人の1年生との生涯の交流を描く感動作……そういう思いで購入したが、物語の中に出てくる共産主義者に対する弾圧の描写に、著者の主義主張を感じざるを得なかったが、数年刻みで場面展開され、分教場での最初の別れ、本校での教え子との再会、そして戦争によって運命を変えられた教え子達。反戦の願いをこめて書かれたことが感じられ、良かった。2020/09/13