出版社内容情報
朝比奈 あすか[アサヒナ アスカ]
著・文・その他
内容説明
今の自分は仮の姿だ。6年生の杏美は、おとなしい友人に紛れて学級崩壊気味のクラスをやりすごし、私立中学に進学する日を心待ちにしている。宿題を写したいときだけ都合よく話しかけてくる“女王”香奈枝のことも諦めているが、彼女と親友同士だった幼い記憶に苦しめられ…。学校も家庭も、生きる世界を選べない子どもたちの葛藤と希望を描き、数々の入試問題に取り上げられた話題作に文庫書き下ろしの特別篇を加えた決定版!
著者等紹介
朝比奈あすか[アサヒナアスカ]
1976年東京都生まれ。慶應義塾大学文学部卒業。2000年、ノンフィクション『光さす故郷へ』を刊行。06年、群像新人文学賞受賞作を表題作とした『憂鬱なハスビーン』で小説家としてデビュー(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
itica
83
学級崩壊寸前の6年3組。子供を侮ってはいけない。支配したがる子、教室の中心になりたい子、空気の読めない子、ぼっちが嫌で合わせる子。30人いれば30の個性が一つの部屋の中で化学反応を起こす。そんな子供たちの姿は大人の世界の縮図を見るようで辛い。教師や親だけでなく、大人は子供を見守ってゆく責任があると感じた。エピローグで少し救われる。 2024/04/24
kei302
54
KUでレンタル。文庫化でほのか篇が追加されているが、まっすう先生の話で終わる方が感動が深かったのになあと、ちょぴり残念な気分。順番変えた方がいいよ。公立小学校の6年生の心情や人間関係がリアル。入試問題に多く引用されるのにも納得。2023/02/23
モモ
53
文庫書き下ろし特別篇があるため再読。ずっと、みんなに優しいのに軽んじられていた、ほのかが主人公。擦り切れた水着などの理由が分かる家族の状態。一人で背負っているものが子どもなのに重すぎる。でも、救いを見つけ、一歩一歩進んでいく姿に希望を感じる。やはり、この話は好き。2023/06/23
エドワード
53
小学生のクラス、それは大人の社会の鏡だ。だが彼らは意地悪や茶化しや悪戯が大好きだ。騒ぎ始めたら止まらない。サブタイトル「みんなといたいみんな」「こんなものは、全部通り過ぎる」が強い同調圧力を表していて心が痛い。あまりにひどい悪戯に、先生は「皆さんは、どうせたいした大人にはなれない。」と言い放つ。先生に同情するが、生徒にも同情する。大人になり、先生になった女子は振り返る。「それでも近づく余地は残されている、という意味だったのではないか」と。子供たちは家庭環境も性格も千差万別だ。教育者は本当に聖職だと思う。2022/01/20
タルシル📖ヨムノスキー
37
色々な物事が低年齢化していると言われて久しいですが、思春期といえば中学生というイメージだった私にとってこの物語は衝撃的でした。大人に片足を突っ込んでいる女子、まだまだ幼いバカ男子。彼らの世界はとにかく広くて狭くて、深くて浅くて、鋭くて鈍い。そしてタイトル通り「今がすべて」。学級崩壊、偏見や差別。これらは子供たちが生まれながらに持っていることではないから、やっぱり親や教師など、身近な大人の影響が大きいんだろう。なんて書いている自分も大した親ではなかったけれど。ずっと手元に置きたい大切な物語が一冊増えました。2023/07/18