内容説明
投資用マンションの営業として“ブラック企業”に入社した大友、夏野、村沢。深夜早朝を問わず民家へ飛び込み営業し、終始GPSで行動を監視され、昼飯は3分以内が掟の毎日だ。ある夏の日、疲れ切った3人は深夜の居酒屋にて“人生一美味いビール”で乾杯する。束の間、人間らしさを取り戻したように思えたが、パワハラ上司・上河内の夏野への締め付けは理不尽さを極め―。命の尊厳を問い、働く人の背中を押す6つの物語。
著者等紹介
安藤祐介[アンドウユウスケ]
1977年、福岡県出身。2007年『被取締役新入社員』で第1回TBS・講談社ドラマ原作大賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
おしゃべりメガネ
131
ハードカバーで読んで号泣して、2年ぶりに文庫化&改題での再読です。やはり冒頭のブラック企業の描写は読んでて目を背けたくなり、胸がつまります。その後、それぞれの視点から綴られる展開は見事な繋がりをみせ、ブラック描写も見事に吹き飛ばしてしまう名作だと思います。タイトルにあるようにビリー・ジョエルの「ピアノマン」がずっと頭の中でリフレインし、読後もなりやまないこと必至です。残念ながら、本作に出てくるようなブラック企業は実在するのかと思うと、複雑ですね。テレビドラマ化もされてるので、しっかり観たいと思います。2021/08/27
坂城 弥生
56
ただ必死に立ち直る人達の連作短編集。でもひとつの行動が誰かを動かして、誰かを救う連鎖がある救いのある話だったと思う。2021/02/17
さぜん
54
「逃げ出せなかった君へ」の改題文庫版。第1章が強烈に印象に残る。ブラック企業の新入社員同期3人の過酷な労働環境。虚構だろうと思うが世間ではパワハラで追い詰められるニュースは後を絶たない。夏野が自殺をし彼に関わる人達のその後の人生が描かれるが、誰もが彼の死を悔やみ自分を責めつつ懸命に生きようとする。逃げる事は決して弱さではない。優しさも弱さではない。とにかく生きるのだ。読後はそんな力強さに励まされる。2021/01/31
あみやけ
43
再々読です。数年前の自分の年間ランキング一位です。とってもよくできた連作短編です。テーマは暗いけど、なんだか前向きな感じになります。こういうことは少なくなっていると信じたいですが、仕事なんてなんとでもなるんですよね。毎回、キンキンに冷えた生ビールを飲みたくなります。そして、ビリー・ジョエル。2024/08/03
いそG
34
ビリージョエルの「ピアノマン」が好きだったので、「ピアノマン」と検索して出会った本。この本、元々は「逃げられなかった君へ」というタイトルだったので、改題されなければ出会えなかったかもしれない。 やはり、本は、出会いだ。 ブラック企業と、人生で一番美味いビールと、名曲ピアノマンとを軸に、独立した話しが見事に繋がっていく。 思っていたのとは全然違う話しだったけど、とてもよかった。 ここまで酷くはないが、私も長時間労働の真面目なハードワーカーなので、他人事ではなく痛かった。 そう。逃げていい。逃げていいんだ。2023/05/15