出版社内容情報
幕末、福井藩は激動の時代のなか藩の舵取りを定めきれず大きく揺れていた。決断を迫られた藩主・松平春嶽の前に現れたのは坂本龍馬を名乗る一人の若者。明治維新の影の英雄、雄飛の物語がいまはじまる。
内容説明
思想と陰謀が交錯する幕末。親藩である福井藩は異様な緊迫感に包まれていた。長州藩を中心とする尊皇攘夷派に圧迫された幕府を救援し、混乱した京都を鎮めるため、挙藩上洛が叫ばれていたのだ。軍兵を率いて上洛すれば、強大な長州藩との衝突は避けられない。重大な決断を迫られた前藩主・松平春嶽のもとに現れたのは、坂本龍馬を名のる浪人体の漢だった―。明治維新の隠れた英雄の生涯を描く、感涙の大河ロマン!
著者等紹介
葉室麟[ハムロリン]
1951年、北九州市小倉生まれ。西南学院大学卒業後、地方紙記者などを経て、2005年、「乾山晩愁」で歴史文学賞を受賞しデビュー。07年『銀漢の賦』で松本清張賞を受賞し絶賛を浴びる。09年『いのちなりけり』と『秋月記』で、10年『花や散るらん』で、11年『恋しぐれ』で、それぞれ直木賞候補となり、12年『蜩ノ記』で直木賞を受賞。16年『鬼神の如く―黒田叛臣伝』で第20回司馬遼太郎賞を受賞。2017年12月、惜しまれつつ逝去(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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三代目 びあだいまおう
188
幕末の四賢侯の一人とも称される松平春嶽。幕末をテーマにした歴史小説は数多くあれど、春嶽を主人公に据える作品は珍しいです。幕末の騒乱期の日本を縦横に奔走したヒーローは数多いて、それぞれが小説の主人公になりうる活躍をするのですが、春嶽は、私を捨てて公に尽くす、いわゆる『破私滅公』を行動指針とし、まさに天を翔けるがごとき視点で日本という国の変革期を俯瞰した傑物。幕末から明治維新までのあらすじが一冊に網羅されているだけで読み得で、知ってる名前が矢継ぎ早に出てくる面白さ。朝井まかて先生の解説がまた素晴らしい‼️🙇2024/06/19
あさひ@WAKABA NO MIDORI TO...
148
幕末から明治維新に至る正に沸騰した時代の流れの中にあって、越前福井藩主松平春嶽らの静かではあるが、そんな中にも確たる信念が心に沁みる。幕末を描いた作品は数多あれど、葉室さんの知識に裏打ちされ、「私」が根底にある権謀術策ではなく、「公」のためとした時代の英傑たちの清廉な気概が心地よい。時代の転換点、難しい時期であったのだろう。それまでの歴史を振り返れば…ラストの春嶽と西郷の対峙の場面はしんとして切ないまでに美しい。巻末の朝井まかてさんの解説を読んで、改めて落涙。いい作品でした。2022/06/25
てつのすけ
41
幕末から明治維新にかけては、興味があるが、複雑すぎてよくわからない。しかし、この作品を読み、坂本龍馬、西郷隆盛、勝海舟といった、歴史の授業で習った人達が、その時代に、どのような役割を担っていたのかを、少しは垣間見ることができた。2021/10/11
kawa
40
松平春嶽を通して見る幕末の動き、他作品で得た知識にまた一層の立体感を綾どり興味深い。志半ばで倒れた橋本佐内、横井小楠そして龍馬、多くの若者の死屍累々の犠牲のなかで近代日本がスタ-ト。葉室氏らしい人間としての生き様を貫くようなドラマはないのだが、この時代はすでにそんなことを描く必要すらない熱い時代だったのだろうと想像。2021/04/23
Gotoran
37
幕末四賢侯の一人、福井藩主松平春嶽を取り上げた時代小説。「破私立公」を旨とし徳川家の私を去り公の政が行われる事を望み、中庸の道を歩んだと云う。物語はペリー来航の10年後より始まり、途中から主役である松平春嶽の半生を描き出す。幕末の出来事を淡々とした抑揚のない文章で積み上げられている。松平春嶽は劉備でいう伏龍と鳳雅に横井小楠と橋本左内を挙げる。横井と橋本がとても丁寧に描かれている。解説にもあったが、本作発行の3日前に著者・葉室麟氏が逝去されている。なんとも感慨深い。2023/11/24