内容説明
信州で暮らす久喜雄司に起きた二つの異変。ひとつは久喜家代々の墓が何者かによって傷つけられたこと。もうひとつは、七十年以上前の死者の日記が届けられたこと。日記には太平洋戦争末期に戦死した大伯父の、生への執着が書き記されていた。そして日記が届いた日を境に、久喜家の周辺では怪異が起こり始める。日記を発見した新聞記者の狂乱、雄司の祖父・保の失踪。そして日記に突如書き足された、「ヒクイドリヲ クウ ビミ ナリ」という一文。雄司は妻の夕里子とともに超常現象に詳しい北斗総一郎を頼るが…。横溝正史ミステリ&ホラー大賞・令和初!大賞受賞作。
著者等紹介
原浩[ハラコウ]
1974年生まれ。長野県出身。「火喰鳥」(本作の応募時のタイトル)で、2020年、第40回横溝正史ミステリ&ホラー大賞・大賞を受賞。同作を改題した『火喰鳥を、喰う』でデビュー(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
starbro
308
毎年楽しみにしている横溝正史ミステリ&ホラー大賞受賞作ということで読みました。雰囲気も内容も好い感じですが、怖さがあまりなく、過去の大賞受賞作と比べるとかなり物足りない。本賞は、レベルが高くないと受賞作なしが普通にあるので、複数の選考委員が主張しているとおり、今回は優秀賞どまりで大賞:受賞作なしで良かったのではないでしょうか? https://awards.kadobun.jp/yokomizo/winners/2021/01/25
いつでも母さん
188
「お前の死は私の生なんだ」なんてこと…残酷な言葉だ。私はいったい何処へ?気になって先を急ぐ。すれ違い歪む時空。どちらが本当の世界?多分どちらも真実で、どちらもここには無いのだろう。何となくモヤモヤが残るが再読の気力は無い(泣)火喰鳥が夢に出そうだ。2020/12/28
モルク
148
横溝正史ミステリー&ホラー大賞作品。第二次大戦の南方戦線で亡くなった大叔父貞市の日記がかの地で見つかり戻ってくる。その時から貞市の墓誌が削られるなどの久喜家での異変が始まる。存在していたはずの人が記憶から消え、死んだ貞市が甦る。貞市の執拗な生への執念。戦いというよりは、食糧の枯渇、マラリアによってほとんどの人が亡くなった南方戦線の悲惨さが滲む。火喰い鳥にかけてはいるが実際は…そういうことだろう。火喰い鳥という不気味な鳥とあいまって真夏の信州に甦る。ミステリーというよりホラー。怖くはないが気味が悪い。2022/02/15
とん大西
137
表紙のイラストも一役買ってるが、まぁ、不気味で不思議で不穏。大絶賛とはいかないが、辻村深月さんの選評「読了後の心地よい酩酊感」はなんとなくわかるような気がします。-終戦の年、南方戦線で敢えなく死んだ大伯父・貞市。70年の星霜を経て久喜家に届けられた貞市の日記。そこから起きたのは現実の崩壊か侵食か。雄一を襲う悪夢、忍び寄る火喰鳥の恐怖。予測不可能な着地点、ザワつく展開が気になっての一気読み。モヤモヤしたものは残るものの微妙にあとをひきます。ラストシーンの巧さが酩酊感をさそうのかも。2021/03/04
33 kouch
120
タイトルと不気味な表紙でつい手に。火喰鳥の狂暴性と見た目の恐竜感が大好きで期待していたのだが…思ったより火喰鳥は出てこなくて残念。戦死しそうだったものが火喰い鳥を喰ったことで蘇り、火喰い王国を作り、それが今の日本(モラルが低い、背が低い=火喰い)みたいな話であって欲しかったが、全然違う。嫉妬の話なのかな…2024/04/03