出版社内容情報
満開の桜の下の墓地で行き倒れたひとりの天使――。昏い時代の波に抗い鮮烈な愛の記憶を胸に、王寺ミチルは聖地サンティアゴ・デ・コンポステーラを目指す。愛と憎しみを孕む魂の長い旅路を描く恋愛小説の金字塔!
内容説明
弾圧の暗い影、獄中のタンゴ、刻み込まれた愛の刻印。愛する人も記憶も失い、自分が何者なのかを問いながら彼女は巡礼路を歩き続ける。十字架を背負い、苛酷な運命に翻弄され、四国遍路からスペインの聖地サンティアゴ・デ・コンポステーラへ。衝撃のデビュー作『猫背の王子』から20年―底なしに愛し、どこまでも闘う主人公ミチルに待ち受ける愛と死、罪と罰、天国と地獄を渾身の筆で描ききった恋愛小説の金字塔!王寺ミチル三部作完結篇。
著者等紹介
中山可穂[ナカヤマカホ]
1960年生まれ。93年『猫背の王子』でデビュー。95年『天使の骨』で朝日新人文学賞を、2001年『白い薔薇の淵まで』で山本周五郎賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
あじ
48
痛いぐらいのスコールをも、スポンジのように吸い込む砂漠のように。乾きにひび割れた唇から滲む血を重ねても、決して交わらぬ定め。圧倒的な太陽のエネルギーと底無しの大地。不毛の砂漠に寄る辺のないオアシス。中山可穂が描くビアンの夜は、20年間も緑の草木一本生えない。年月ばかりが過ぎ市民権を得られない同性愛。神をも欺く背信なのか。果敢にも性の尊厳を叩きつけた本作。20年目にして三部作の最終巻だ。始まりであって終わりではない。著者自身が渇きに飢える限り、また違うアプローチで攻めるだろう。その攻めを私も求めて止まない。2014/04/30
そうたそ
31
★★★☆☆ 「猫背の王子」「天使の骨」に繋がるシリーズ三部作の完結編。個人的に言えば、このシリーズは大して好みではなかったので特に感慨深いわけでもないが、中山可穂さんの久々の新作という意味では非常に感慨深いものがあった。シリーズ前二作は読むのを途中でやめたくなる感じさえあったが、この作品は中山可穂さん自身が作家としてより成熟した感もあり、シリーズ完結編としてだけでなく、作家中山可穂の集大成のようなものさえ感じさせる力作であったのではないかと思う。ただ、このシリーズやっぱり苦手だと改めて感じる部分も多少。2014/04/15
ちょん
24
「王子ミチル」三部作の完結編。すごい独裁政治時代の日本。同性愛者の迫害を続けるネオナチたちと戦うレジスタンスたち。人のために生きる尼僧の信念のすさまじさ。もう一度、前作を読まねばならない気持ちにさせられた。2015/11/03
まこと
23
可穂さんの新作を読める幸せとミチルに再会出来た喜びを噛み締めつつ読了。どのくらい涙を流しただろう?早く続きが読みたいのに読み終えたくないジレンマは正にシズとベアが巡礼を終わらせたくなくてゆっくり歩むのと似ていますね。長い長いミチルの三部作が終わった時まるで巡礼を終わらせたような達成感と喪失感で放心状態になってしまいました。ミチルだけでない久美子のマリアの静慧尼のベアトリーチェの静流尼の壮大な愛の物語。愛の国を見付けるために何度でも読みたいです。2014/03/12
くり坊
18
タンゴと遍路の物語。 「猫背の王子」「天使の骨」に続く、王寺ミチルを主人公にした3部作(?)完結編いうことですが、「猫背の王子」からは20年の隔たりがあるので、シリーズは、意識しなくてもよいかと思います。「天使の骨」は既読だと味わいが増すかもですが。 シリーズ云々よりも、冒頭部分で架空日本国の設定をうまく飲み込むことが出来るかどうかが、この本を楽しめるかどうかのポイントかなと思います。そこさえ飲み込めば、いかも小説らしい小説として、素晴らしく楽しめる作品です。あとは、タンゴのリズムとパッションで読め!2014/03/31
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