出版社内容情報
不完全であれ。未熟であれ。不自由であれ――スポットライトと拍手が、彼女達のすべて。あまたの憧れと挫折の果てに、選ばれた人間だけが舞台へと躍り出る少女サーカス。そこは、一瞬に命をかける少女達が集う舞台。
内容説明
20世紀末に突如都市部を襲った天災から数十年後、震災復興のため首都湾岸地域に誘致された大規模なカジノ特区に、客寄せで作られたサーカス団。花形である演目を任されるのは、曲芸学校をトップで卒業したエリートのみ。あまたの少女達の憧れと挫折の果てに、選ばれた人間だけで舞台へと躍り出る、少女サーカス。天才ブランコ乗りである双子の姉・涙海の身代わりに舞台に立つ少女、愛涙。周囲からの嫉妬と羨望、そして重圧の渦に囚われる彼女を、一人の男が変える。「わたし達は、花の命。今だけを、美しくあればいい」。
著者等紹介
紅玉いづき[コウギョクイズキ]
1984年生まれ、石川県金沢市出身。金沢大学文学部卒業。少女の崩壊と再生を描いた『ミミズクと夜の王』で第13回電撃小説大賞・大賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
*すずらん*
144
紅玉さんの美しい言葉選び、そして流れる様な文章を堪能しました。本を開く度に、私は 人々の期待と興奮が埋め尽くす少女サーカスへと誘われました。そこには数多の辛苦を舐め、己を犠牲にしてきた者の たじろぐ様な美しさと、誇り高い気高さが充満しています。永遠をちょうだいと歌いながらも、只その一瞬の為だけに命を燃やし尽くす。美しさは、何よりも汚い物の上に成り立つ。不完全で、不自由だからこそ美しい。片足となったサン=テグジュペリは、半身である双子の片割れから手を放し、掴んだのはブランコではなく、自由と永遠でした。2014/01/22
文庫フリーク@灯れ松明の火
133
【年年歳歳、花相似たり。歳歳年年、花同じからず】先々アンデルセンは団長となり、少女サーカスと、少女たちの永遠という名の「刹那」を守って行くのだろう‐補佐役はカフカ。一読して、おっさん読書子には届かぬと思えた感性。命を切り売りする少女たちの裏で蠢く非合法な賭博とダーティな手段。天災続きのベイエリア復興に、経済特区として公営カジノ設立し、その客寄せのため創設された少女サーカス団。現代の宝塚を彷彿させる学校に、あまたの少女達の憧れの頂点に立つ勝利者・パフォーマー。姉の身代わりを勤める愛涙へ「一時でも、生きる→2013/07/26
とら
101
綺麗。様々な要素がとてつもなく美しく、綺麗。サーカスのみんながみんな華々しく一瞬だけ輝いて、散っていくんだと思う。一人ひとりが恐ろしい程に一つのものに対して真っ直ぐに向かっていくから、清々しかった。愛涙はブランコ乗りには執着など無く、惹かれた人に向かって一直線。その他の人も、その焦点はただ一つだけ。一つの目標に全力で向き合っている。自分も見習らなければならないとも思ったし、母親が言った通りもっと色んなものに目を向けた方が良いのでは?とも思った。う~ん、でも難しい。涙海の生き方も間違ってはいないと思うから。2013/12/25
うしこ@灯れ松明の火(文庫フリークさんに賛同)
94
少女サーカス。それは道化のいないサーカス団。あまたの少女達の憧れと挫折の果てに勝利した者は、古き文学者の名前を戴き舞台へと躍り出る権利を得る。これは選ばれし少女たちの物語。凛とたたずむ少女たちの姿が目に浮かぶようでした。憎まれ口を叩きながらも、さり気なくフォローを入れているアンデルセンが良かったです。きらびやかな表舞台とは裏腹に様々な思惑が絡む世界。生半可な覚悟では生きてはいけない。そんな過酷な世界に身を置く少女たちに幸あらんことを!★★★★2013/05/07
nyanco
87
「永遠をちょうだい」、歌姫アンデルセンは想いを唄に。少女だけのサーカス団。美しい表舞台と、嫉妬と足の引っ張り合いの舞台裏。おとなになる前のほんのひと時、ホタルの様に儚げに見えるものの、強く激しく燃える少女たちの命。ブランコ乗りのサン・テグジュペリ、歌姫・アンデルセン、猛獣使いのカフカ、作家の名前を付けられた少女たち。その名を襲名することは、絶大なる人気を手に入れられる、しかし、そこには彼女自身の名前も、その少女である必要性も何もない。足を怪我し、妹身代わりを頼む姉。続→2013/06/13