内容説明
小学五年生の重森昇治は小笠原行きの船に乗った。父親が自殺し、母親に恋人が出来たのだ。南の島で昇治を迎えたのは、エーブという若々しく格好いい老人だった。彼の店『ジュークボックス・カフェ』に集まるのは、ジェセ、ナサ爺といった元気でにぎやかな老人たち。やがて、冷たい目をした少女・加絵と出会う。加絵は一緒に島に来た父親について「自殺しそうなんだ」と語る。エーブと昇治は加絵親子を誘い、月を見るために中央山に登る。すると、山頂である「奇跡」が起き…。
著者等紹介
川上健一[カワカミケンイチ]
1949年青森県生まれ。77年『跳べ、ジョー!B・Bの魂が見てるぞ』で第28回小説現代新人賞を受賞しデビュー。2001年に刊行した『翼はいつまでも』は「本の雑誌」2001年度ベスト1に選ばれ、翌年第17回坪田譲治文学賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ゆみねこ
66
小学校5年生になったばかりの昇治は、母に送り出されたった一人で小笠原行きのフェリーに乗る。昇治の寂しさ、切なさを見抜いてくれた島のエーブを始めとした優しい老人たち。ワケありそうな父と一緒に島に来ている加絵。美しい島の風景と海、夜の虹、この本を読むと小笠原に行ってみたくなりますね。2015/12/02
takaC
54
「加絵!」ちゃんとうまく行くといいね、昇治。俺も小笠原に行きたくなった。2014/03/08
七色一味
32
読破。1人、遥か1700キロ離れた小笠原諸島の父島に旅することになった少年の、少年ゆえの鋭いまでの感受性に揺らめく感情と、それを押し殺そうとする姿が滲み出た作品。不安と、目新しい環境への期待がある少年を、大自然のように優しく包みこむ島のおじさん達。年齢を越えた心の交流が、少年の心を優しく解きほぐして行く。カジキマグロとのくだりは冗長だけど、それも担ぐための伏線?(笑) ツンデレ系少女が、ちょっとムカッとくる感じ。2013/02/14
万葉語り
30
おがさわら丸や父島に行った時のことを思い出しながら読んだ。小学生の昇治が一人でおが丸に乗りあの島に行くのは孤独すぎると思いながら読み始めた。島でカフェを営むエーブや島民達の交流、同じ船で島に来た加絵とのふれあいの中で徐々に昇治がほぐれ、母が迎えにきた時「会いたかった」と言えるようになったのは、やはりあのつらい歴史を持ちながらも底抜けに明るい父島の空気がなせる技だと思った。いつか必ずもう一度行きたいと思っているあの島を再訪できた昇治がうらやましいと思う。月の魔法がかける虹も見てみたいと思った。2015/11/21
keith
29
一度は訪れてみたい小笠原。文字の間から風景が目に浮かびました。ただ物語としては主人公の少年を取り巻く大人たちが優しく、かつ、ものわかりがよすぎて、逆に白けてしまいました。2015/09/11
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