出版社内容情報
坂口 安吾[サカグチ アンゴ]
著・文・その他
内容説明
「人間は堕落する。義士も聖女も堕落する。それを防ぐことはできないし、防ぐことによって人を救うことはできない」第二次世界大戦直後の混迷した社会に、戦前戦中の倫理観を明確に否定して新しい指標を示した「堕落論」は、当時の若者たちの絶大な支持を集めた。堕ちることにより救われるという安吾の考え方は、いつの時代でも受け入れられるに違いない。他に「恋愛論」「青春論」など、名エッセイ12編を収める。
目次
日本文化私観
青春論
堕落論
続堕落論
デカダン文学論
戯作者文学論
悪妻論
恋愛論
エゴイズム小論
欲望について
大阪の反逆
教祖の文学
不良少年とキリスト
著者等紹介
坂口安吾[サカグチアンゴ]
1906年(明治39年)、新潟生まれ。東洋大学印度哲学科卒業。1946年に発表した『堕落論』が反響を呼び、続く『白痴』によって太宰治、織田作之助らとともに新文学の旗手として文壇に特異な地位を築く。1955年、脳出血により48歳で急逝(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Kircheis
316
★★☆☆☆ 『堕落論』の他、エッセイ12編を収録。 ざっくり言うと、全体的に綺麗事で取り繕わず、欲望に忠実に生きるべきだという内容のエッセイ集だ。 古い価値観が強く残る戦後間もない時代にはマッチしたのかもしれないが、坂口の言う意味の「堕落」が完了した現代では、本書の内容は当たり前すぎて陳腐に感じる部分が多い。 利便性を重視し、我慢することを嫌う現代の人間からすれば、むしろもう少し欲望を抑えなさいと言いたくなる時がある。 とりあえず、坂口安吾が志賀直哉のことを凄く嫌っていたことは伝わった(笑)2022/02/25
優希
140
角川文庫で再読です。通俗的倫理を否定する論調を述べたからこそ安吾は時代の寵児となりえたのだと思わずにはいられません。常に世間に否定の眼差しを向けたアンチ社会派であるが故の名エッセイが詰まっていますね。若い人に支持された理由もうなずけます。2017/01/17
青蓮
106
新潮文庫版で遥か昔に読了してましたが文ストカバーなので購入。13編のエッセイを収録。全体を通して感じた事は人間の本質を鋭く観察する彼の目の確かさ。虚飾を嫌い、ありのままの現実を認めて文学を創り上げるリアリストな安吾を敗戦当時、若者が熱烈に支持した理由が解る気がします。皆そう思っていても口では言えない事を安吾はズバリと指摘する。その痛快さ爽快さ。人間の限界を知りながらも人間を愛し続けた安吾。容赦なく向けられる彼の瞳に現代がどう映るのか興味がある。俺が生きていた時代と何も変わってない、と言いそうな気もするが。2018/06/13
扉のこちら側
99
2016年449冊め。綺麗ごとではなく、泥にまみれてあがいたその先に見えてくるものがあるのだという。戦後の日本で反響が大きかったのもうなづける。安吾というと「桜の森の満開の下」しか知らないのだが、いつか全著作を読んでみたくなった。表題作の「堕落論」はもちろんだが、「青春論」もおもしろい。2016/06/21
優希
92
通俗的理念を否定するからこそ、安吾は時代の寵児となりえたのだと思います。常に世間に否定の目を向けたアンチ社会者であったが故のエッセイが詰まっていました。若い人に支持された人物だと思わずにはいられません。2019/08/16