内容説明
友はずっと友だ。それだけは忘れるな―。血なまぐさい事件が相次ぐ幕末。百万石の加賀藩は、対立する攘夷派と開国派の狭間で大きく揺れていた。足軽の島田一郎と千田文次郎は互いに支え合いながら、熾烈な戊辰戦争を生き抜く。明治になると、一郎は反政府活動家に、文次郎は軍人にと正反対の道を歩むようになるが…。武士は何のために生き、何のために死ぬのか。激動の時代を正面から描いた、著者渾身の傑作歴史小説。
著者等紹介
伊東潤[イトウジュン]
1960年、神奈川県横浜市生まれ。早稲田大学卒業。2007年『武田家滅亡』(角川書店)でデビュー。『国を蹴った男』(講談社)で第34回吉川英治文学新人賞を、『巨鯨の海』(光文社)で第4回山田風太郎賞と第1回高校生直木賞を、『峠越え』(講談社)で第20回中山義秀文学賞を、『義烈千秋 天狗党西へ』(新潮社)で第2回歴史時代作家クラブ賞(作品賞)を、『黒南風の海―加藤清正「文禄・慶長の役」異聞』(PHP研究所)で本屋が選ぶ時代小説大賞2011を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ブラックジャケット
16
幕末維新史は当然ながら長州・薩摩の比重が大きい。朝敵の方も会津をはじめ固定化された面々。本著は加賀藩の実在の足軽二人を主人公とした。斬新な視点で幕末維新を語る。熱い魂を待つ島田一郎、冷静で剣の名人千田文次郎、歴史の本流の中で加賀藩の存在を示したい。しかし藩政は尊皇攘夷派を弾圧する。戊辰戦争の北越戦線に従軍する二人。一郎は自由民権運動へ、文次郎は新設された陸軍へ、二人の運命は別れる。文次郎は西南戦争で西郷隆盛も首を発見する殊勲。一郎は大久保利通を暗殺する一団に組みする。新鮮な幕末・維新の歴史小説だった。 2023/09/16
H
8
加賀藩士と西郷、大久保の間にこんな因縁があったとは知らなかった。有名無名を問わず登場人物それぞれの葛藤と時代に翻弄される姿を丁寧に描いた秀作だと思う。2021/05/31
かずぺん
7
この時代の、新しい国を作ろうとする、産みの苦しみを感じられる。誰しもが苦しみながら生きている。2021/01/29
coldsurgeon
6
明治維新の波乱の時代に、加賀藩の若き足軽として世の中に足を踏み出した幼馴染の二人の生き様が描かれる。下層の士族の一員が、時代に翻弄され、時代に臨んでいく。世の中の変動は、時として、友情を引き離し、また近づけるものなのか、と読後に思う。西郷の首を見つけた者と、大久保利通を暗殺した者の、半生を初めて知ることになった。2021/09/30
ミム
5
西南戦争を西郷側から書いたものと思って読み始めましたが、全く違っていました。やはり歴史上の有名人ではなくて、伊東潤ワールドは無名の人の視点で書いたものが似合います。西郷の首が発見されなかったら生存説が広まったかも、というところでは、本能寺の変の後に信長の首が発見されなかった事が光秀の最大の失敗だった事を連想しました。2021/04/23