出版社内容情報
太宰 治[ダザイ オサム]
著・文・その他
内容説明
「人間は恋と革命のために生れて来た」。古い道徳とどこまでも争い、“太陽のように生きる”べく、道ならぬ恋に突き進んでいく29歳のかず子。最後の貴婦人の誇りを胸に、結核で死んでいく母。自分の体に流れる貴族の血に抗いながらも麻薬に溺れ、破滅していく弟・直治。無頼な生活を送る小説家・上原。戦後の動乱の時代を生きる四人四様の、滅びの美しさを描き、戦後、ベストセラーになった、太宰の代表作。
著者等紹介
太宰治[ダザイオサム]
1909年(明治42年)、青森県金木村(現五所川原市)生まれ。本名、津島修治。東大仏文科在学中に非合法運動に従事するもやがて転向、本格的な執筆活動へ。35年(昭和10年)、「逆行」が第1回芥川賞の次席となり、翌年、第一創作集『晩年』を刊行。この頃からパビナール中毒に悩む。39年、井伏鱒二の紹介で、石原美知子と結婚。平穏な生活を得て、「富嶽百景」「女生徒」「走れメロス」などの多くの佳作を執筆。戦後、『斜陽』でベストセラー作家となるが、「人間失格」を発表した48年、「グッド・バイ」連載中の6月13日夜半に山崎富栄と玉川上水で入水し、没(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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優希
108
角川文庫で再読です。堕落と滅びの美しさがまぶしく感じられました。傾き始めた人生は、転落しか道はないのですが、そこに繊細で儚さを乗せてくることで見える風景はまさに輝いていました。堕ちていくことは物哀しいことかもしれませんが、いつかまたやがて新たな道へと歩み出すことを信じるしかないのです。2018/01/14
扉のこちら側
95
2018年240冊め。初読は小学生の頃。何度か再読してみると、繊細は母親の、しかし弱さを子どもの前では表さない姿が好ましく思える。戦地から帰ってくる弟に対して、母に向かって投げかける言葉等、母娘関係に注目した。いつかまた再読しよう。2018/06/30
aquamarine
91
ただ生きる。それだけのことがこんなにも難しい。どれほど前途が絶望的でも毅然と美しい所作でスウプを飲む最後の貴婦人、母。麻薬に溺れて落ちていく弟。もがいてもがいて刹那的に生きるのか、毅然と前を向いて生きるのか、あるいは生きることをやめてしまうのか。革命を起こそうとするかず子が愛しい。最後には背筋をピンと伸ばし毅然と立つ彼女が見えました。これを書いた一年後に太宰がとった行動を思い、男たちの生き様だけが印象的でしたが、今回かず子に思いを乗せられたのが自分ではとても嬉しいです。桜桃忌に。2019/06/19
ゆいまある
85
桜桃忌を機に手に取る。太宰の恋人、静子の日記が題材に使われており、共著と言える。滅びゆく華族の母子を描いたセンチメンタルな話。離婚して実家に戻ったかず子は美しい母を看取った後作家の上原(太宰本人がモデル)と恋をして(実際は太宰が小説のネタ欲しさに接近したとの説がありしかもまんまと傑作に仕上げたんだからかなりゲスい)、妊娠する。かず子と上原が結ばれた日、薬物依存でボロボロだった弟直治は自ら命を絶つ。この光と闇のドラマチックな使い方が天才的。直治と太宰が重なる。その承認欲求の強さゆえに生きにくかった太宰を思う2025/06/25
優希
85
堕落と滅びの美しさが語られていると思いました。美しい作法でスウプを飲む母、麻薬に溺れる弟。もがきながら生きるのか、先を信じて生きるのか、生きるのをやめるのか。かず子が革命を起こそうとしているようで愛おしかったです。2019/08/14