内容説明
妹の婚礼を終えると、村の牧人メロスはシラクスの市めざして走りに走った。約束の三日目の日没までに暴虐の王のもとに戻らねば、自分の代わりに友セリヌンティウスが殺される。メロスは約束を果たすことができるだろうか?日はすでに傾いている。メロスよ、走れ!―身命を懸けた友情の美しさを描いて名高い表題作のほか、「富嶽百景」「駈込み訴え」「東京八景」など、執筆活動の充実ぶりを示す、太宰中期の佳作9篇を収録。
著者等紹介
太宰治[ダザイオサム]
1909年(明治42年)、青森県金木村(現五所川原市)生まれ。本名、津島修治。東大仏文科在学中に非合法運動に従事し、やがて本格的な執筆活動へ。1935年、「逆行」で第1回芥川賞の次席となり、翌年には処女作品集『晩年』を刊行。以後「走れメロス」「斜陽」など多くの佳作を執筆。「人間失格」を発表した1948年、玉川上水に入水し、没(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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Take@磨穿鉄靴
71
短編集。走れメロスを読みたかったけど他の話が長かった。退屈で疲れた。太宰氏は拗らせ過ぎ。共感できない世界。走れメロスは走るペースがどれくらいか想像しながら楽しむのが目的だったけど…。10里(30kmちょい)を夜中から午前の昼ちょい前に移動としてまあ約10時間。20:00/km。コースがトレイルだとしてもこれは歩いてるね。時速3km。うん。歩いてるわ。走ろうよ!歩いてんじゃないよ!「走れメロス!」そんなお話。★★☆☆☆2018/08/23
優希
56
太宰の執筆活動が充実していた頃の作品集です。そのせいか、全体的に明るいトーンの作品が多いように感じました。イスカリオテのユダの告白調の『駆け込み訴え』が好きです。2023/06/12
Vakira
54
多分、誰でも知ってる、中学の国語の教科書に載っている名作。もう数十年ぶり。最近、治ちゃんに嵌まって、基本、ストーリーは知っていますが、今、これを読むどう感じるのか?試してみたくなって読んでみた。友情と信頼。メロスの苦悩しか覚えていなかったんですけど、読んでみるもんだ。ちゃんとドラマになっていました。帰路での河の激流、盗賊との遭遇、忘れてました。今回の収穫、ちゃんと最後に治ちゃんらしい羞恥のオチありました。最後、メロス、全裸じゃん。2023/07/12
けいご
47
執筆時の気持ちのバラつきから生み出される作品からは生々しい「怠惰な忍耐、そして正直な嘘つき」を痛いほど感じる事ができる1冊でした★「走れメロス」を読みたくて手に取ったのだけれど、読んでいる途中で「なぜ中学生で太宰を勉強する方針になったのだろう?」と言う疑問が頭から離れなくなりましたwデカダン的なものは人間に必要なんだよ〜って事なのかな?国語の教科書の内容がどういう経緯で出来上がっているのか気になってしまうキッカケになりましたw中学の子供がもしも熱心に太宰治を読み耽っていたら大人は気になると思うのよw2021/12/11
キナコ
40
久しぶりの太宰作品。現代と文章の書き方やテンポが違うため、はじめは戸惑ったが慣れてくると読みやすいと思えた。昔教科書で「走れメロス」を読んだが、こうしてみると太宰治の作品は年代によって印象が変わると感じた。特に印象に残ったのが「畜犬談」「駆け込み訴え」私自身の語彙が少ないため、なんと表現したらいいのかは分からないが、読み終わった後胸に広がる安堵とも違う何か。こういった感情を適切に文章にし、世界観に惹き飲む才能が太宰治の魅力かと思えた。時代を越えての名作と納得。また再読したい一冊。2021/11/08