出版社内容情報
田辺 聖子[タナベ セイコ]
著・文・その他
内容説明
夫が威張る相手は私しかいない。そう思うと、ワガママで身勝手な夫を捨てるのも哀れに思えてくる。こういう、男を甘やかすホトケ心は実は危険なもので…。(「ほとけの心は妻ごころ」)夫は中年にもなって美貌が自慢。ちょっとお多福顔の私と見くらべては「美男と野獣」とご満悦。しかし私は気付いた、美貌とは見飽きるものだ。(「美男と野獣」)オロカな夫を見つめる妻たちの日常を、鋭い筆致とユーモアで描いた10篇。
著者等紹介
田辺聖子[タナベセイコ]
1928年、大阪生まれ。樟蔭女専国文科卒。64年『感傷旅行』で芥川賞、87年『花衣ぬぐやまつわる…』で女流文学賞、93年『ひねくれ一茶』で吉川英治文学賞、94年菊池寛賞、98年『道頓堀の雨に別れて以来なり』で泉鏡花文学賞、99年読売文学賞を受賞する。2000年文化功労者に。著書多数。08年には文化勲章を受章。19年、91歳で永眠(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ふじさん
89
久しぶりの田辺聖子、やはり面白い。ダメな人がだめなまま生きることが許される世界、おおらかで風通しがいい。今の時代に忘れかけているものではないか。ここに登場する男たちは愚かでしょうもないが、それを理解し、支え許す健気な妻がいる。ここに登場する男たちは幸せだ。様々な夫婦の在り方を鋭い筆致とユーモアたっぷりに描いた短編。 2021/09/27
クプクプ
70
1980年の作品を最近、文字を大きく改版した本。短編集で「もう長うない」という作品が私は一番気に入りました。1980年といえば私は小学生だったのですが、この本の登場人物を当時の両親に重ねたり、今の自分に重ねたりして非常に面白かったです。私は田辺聖子の作品の時代背景がわかることにはっきりと気づいた読書でした。2021/08/05
えりまき
15
2023(348)色々な夫婦の短編集。どのお話も、妻が夫を立てていて・・・というか、上手に操作している。どのお話も他人事なので、楽しく拝読。自分だったら絶対耐えられません!寺地はるなさんの解説「だってわたしたちはみんなそれぞれ、数多の欠点を抱え、お互いに許したり許されたりしながら生きている。」 2023/12/09
tomoka
9
妻のほうが一枚うわてと言うことでよろしいかと。2020/09/07
ちどり
4
いろんな夫婦の短編集。 だいたいの家庭が ろくでもないオット(小さな家庭王国の暴君みたいなん)と妻という構成。 こういう旦那は今の世ではNGである。 女は耐えるというのでもないし 我慢でもないし、否定するというのでもない。 しかし 昭和の女たちは(戦時中を知る女たちは) こういう男たちを対岸の火事のように客観的に見ており 同じ土俵に上がらない。 広くて深くて聡明であったかい。 女としてこっちのほうが上等に見えるのは何故なんだろう。 昔の女の方が賢しかったのかもしれない。2021/05/18