出版社内容情報
肝試しに荒れ果てた屋敷に向かった女性は、かつて人殺しがあった部屋で生乾きの血で描いた蝙蝠の絵を発見する。その後も女性の周囲に現れる蝙蝠のサイン――。名探偵・由利麟太郎が謎を追う、傑作短編集。
内容説明
鎌倉に集まった男女が肝試しに興じ「蝙蝠屋敷」と名づけた廃屋に踏み込むと、胸を抉られた女性の凄惨な死体を発見する。部屋の壁には、生乾きの血で描いた蝙蝠の絵が残されていた。犯人の目処がつかないまま、第一発見者の前に再び蝙蝠の符牒が現れ…。表題作など、“金田一耕助”シリーズに並ぶ名探偵“由利麟太郎”シリーズを含む全9篇。希少なSF短篇など、横溝正史の多才ぶりを味わえる名短篇集が待望の復刊!
著者等紹介
横溝正史[ヨコミゾセイシ]
1902年、神戸市に生まれる。旧制大阪薬専卒。26年、博文館に入社。「新青年」「探偵小説」の編集長を歴任し32年に退社後、文筆活動に入る。信州での療養、岡山での疎開生活を経て、戦後は探偵小説雑誌「宝石」に、『本陣殺人事件』(第1回探偵作家クラブ賞長編賞)、『獄門島』『悪魔の手毬唄』などの名作を次々と発表。81年、永眠(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Kircheis
174
★★★☆☆ 由利&三津木シリーズ二編を含む短編集。 永く記憶に残りそうな名作こそなかったが、いずれもそこそこ面白く読んで損はない。 内容はかなりバラエティに富んでおり、推理系、恋愛系、SFなど幅広い。 一番好きなのは、ラストのヒロインの決断が晴れ晴れしい『マスカット綺譚』。 由利&三津木シリーズでは、雰囲気重視の表題作よりロジカルな『銀色の舞踏靴』の方が好み。 『二千六百万年後』は、珍しいSF物で内容的には凡庸だと思うが、やや戦意高揚的な描写が時代を反映していて興味深い。
nobby
144
あらら目当ての由利麟太郎モノは2篇だけ(笑)それでも30頁ばかりの短編9つは存分に楽しめた♬もう取り上げられる鸚鵡(おうむ)に猿に蝙蝠(こうもり)といった生き物や、天から降ってきた花束に奇妙な魔人のマスコットに銀の舞踏靴に肖像画なんてアイテムが魅力でいっぱい!このボリュームで、おどろおどろしい雰囲気はサスガに味わえないものの、少ない登場人物や限られた仕掛けでの最後の捻りは切れ味抜群!ダイイングメッセージ解読や、まさかの横溝先生のSFまで味わえるのも至福のひととき。依然、由利先生の特徴は美しい白髪のみ(笑)2020/08/12
雨
30
短編集。表題作よりマスコット綺譚が好みだった。2023/11/09
たぬ
28
☆3 んん~物足りない! えっもう終わり? せめてあと10ページ謎解きに割いてくれませんか? と思ってばかりの全9編でした。金田一シリーズの等々力警部とかなじみのキャラ名が見えたのは淡く嬉しかったけど。ラストは珍しく科学小説で新鮮。2021/04/22
マッちゃま
25
ショートショート1作を含む9作品の短編集。うち2作が由利モノ、1作は科学小説と銘打たれた作品とバラエティに富んだ内容。由利モノはどちらも楽しめました。短編だけにスパッと終わるのも悪くない。トリック云々より雰囲気で楽しめた。他の作品も氏らしい感じで嫌いじゃない。個人的な好みはノンシリーズの「マスコット綺譚」女優たちが手に入れた途端に幸運になる護符を巡る物語。役に恵まれ良いパトロンが付き人気者となる…こうなると読み手としては「この物語、どうオチる?」と想像しながら頁を捲っていく。いや、見事なラストでした♪ 2020/07/03