出版社内容情報
愛した君は何処へ──。伊集院静の出逢いと別れが凝縮した、奇跡の物語。
内容説明
ドキュメンタリー番組で出逢った三阪剛という青年に、作家の私は強く惹きつけられた。2人で作り上げた松井秀喜の番組は成功し、全ては順調だった。だが、三阪君には病魔が迫っており、さらに彼には決して忘れることのできない女性がいたのだった。彼が将来を約束したその女性は、突然、彼のもとを去ったというのだ。彼の死後、手紙で彼の想いを受け取った私は、三阪君の過去を辿り、彼女の行方を探しはじめる―。
著者等紹介
伊集院静[イジュウインシズカ]
1950年山口県防府市生まれ。72年立教大学文学部卒業。CMディレクターなどを経て、81年短編小説「皐月」でデビュー。91年『乳房』で第12回吉川英治文学新人賞、92年『受け月』で第107回直木賞、94年『機関車先生』で第7回柴田錬三郎賞、2002年『ごろごろ』で第36回吉川英治文学賞、14年『ノボさん 小説正岡子規と夏目漱石』で第18回司馬遼太郎賞をそれぞれ受賞。16年紫綬褒章を受章。著作多数(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ふじさん
87
前半は、若きディレクター三阪剛との交流を中心とした作家の私小説であり、後半は三阪剛が愛したヤスコの残酷で、理不尽で、無慈悲な苦難と絶望の物語である。分離しているようで、話はきちんと繋がり変容していく。前半の明るく語られる事柄が、後半の暗く絶望の世界で捉え直される。松井秀喜の活躍、カザルス「鳥の歌」が作品に深い意味合いを持たせている。波瀾に富んだ男女の悲劇的な運命を描いた物語ではあるが、登場人物たちの潔く力強い生き方が、静かに、熱く心を揺さぶる。伊集院静の作品の中では、一番好きなかもしれない。 2023/02/01
かしこ
75
母から借りた本。伊集院さんの小説は初めてかも。読みやすかった。宮本輝さんの雰囲気にも感じた。松井秀喜の人の良さって、この本にもあるように画面からいつも伝わってくるよね。イチローは孤高の人。松井は愛くるしい。そんなイメージ。アメリカで人気なのもわかる。日本で活躍しているときはあだ名のゴジラだったのも魅力からかな。ありきたりな男女が再会をする感動ものかと思ったらいろんな展開をして行って驚き。天使の声の表現もいいな。人間にはみんなそんな声が聞こえるのか、それとも…。私にもいつか聞こえるのかしら。2020/06/25
てつのすけ
43
前半と後半で、趣がまったく異なっている。後半は、前半からは想像できない展開が待ち受けていた。後半途中は、酷い内容だったので嫌気がさしてきたが、ラスト数ページで感動に変わった。2020/10/13
ランラン
10
再読。人は生きていけば悲しいことに巡り逢うのが私たちの生です。著者が若いときに大切な人を幾人も亡くしてきただけに言葉に重みが感じられる。天使の分け前という考え方はいい話であった。2025/05/03
ランラン
6
この話に登場する女性の壮絶な人生に読み終わったときに胸にこみあげてくるものがありました。それはなぜはか、生きることはつらいことの連続であることと、それを乗り越えていくたくましさがあったからです。「人間生きていけば悲しいこととめぐり逢うのが人生であり、でも人間がこうして何千何万人が泣いたり笑ったり怒ったりしているのが悲しみには終わりを迎えることがあるからである」感動の言葉でした。2020/12/05
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