出版社内容情報
江戸末期、船大工の平蔵は異人であるロシア人の船を建造することになった。技術を盗むためと嫌々造船に携わるが、彼らの温かい心に触れる内に平蔵は考えを改め始める。そんな中、彼らの命を狙う攘夷派の存在が――。
内容説明
黒船来航の翌年、この国を次々と災厄が襲った。異人憎しの声が高まる中、伊豆国戸田村の船大工・平蔵は、難破したおろしあ人の船の造船世話係補佐役を命じられる。平蔵もまた彼らを忌避していたが、おろしあの人々の温かい心に触れ、次第にその考えを改めていく。だがその一方で、異人を斬って攘夷を成そうとする志士たちが、暗躍し始めていた。そこには、二十年前に生き別れになった平蔵の幼なじみ・士郎の姿があった。交わらぬ道を歩む二人が再会するとき、彼らの運命は―。己の信念を貫き、恐れず生きるとはどういうことか。今の世を生きる我々の明日をも照らし出す、傑作時代小説!
著者等紹介
篠綾子[シノアヤコ]
埼玉県生まれ。東京学芸大学卒。2000年、第4回健友館文学賞受賞作『春の夜の夢のごとく 新平家公達草紙』でデビュー。主な著作に19年に第1回日本歴史時代作家協会賞作品賞を受賞した『青山に在り』ほか、17年に第6回歴史時代作家クラブ賞シリーズ賞を受賞した「更紗屋おりん雛形帖」など多数(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ゆみねこ
70
篠綾子さん、初読み。嘉永7年の大地震と津波で大破し海に沈んだロシアの船『ディトナ号』。韮山代官江川太郎左衛門の命を受けた戸田の船大工・平蔵。ロシア人との交流を通し大型船を作ることが物語の主軸ではなかった。平蔵と士郎の関わりがもうひとつの物語。2020/08/02
まあやん
9
ディアナ号、地元なのによく知らなかったので、期待して読み始めたのですが、何だかちょっと消化不良でした。 兄弟の入れ替わりとか、人は変われるとかの方に重心があったので、自分が読みたかったものとちょっと違った、かな?設定に納得できなかった、みたいな? サクサクと読めておもしろかったんだけど。歯切れの悪い感想になってしまいました。2020/07/07
ぱろぷんて
6
安政の東海地震でロシア船が沈み、戸田村でロシア船が建造されることになる。船大工仲間たちから平蔵は半ば押し付けられ彼らの世話役として船の建造に取り組む。そんな中、脅迫文が投げ入れられその筆跡が生き別れになった義兄弟のものだと直感するが…造船一本でいくのは難しいのはわかりますが、アレクやヨシフとの交流をもっと見たかったなぁと。 2021/06/13
和埜
2
主人公の平蔵が変化していく父親、同僚、異邦の民との関係性の中で、その時々の大切にしたい思いを胸に抱いて貫き通さ姿に男泣きさせられます。 困難な状況の中で信念を実行する壮年の逞しい話し。2020/04/20
ぱろ
2
幕末、安政の大津波によって大破したロシア船ディアナ号に代わる大型船を、幕府が建造することになる。そこに関わることとなった船大工の平蔵を中心に、船大工仲間との確執、ロシア人達との交流、子どもの頃に別れた親兄弟との因縁が描かれる。人がいいはずの平蔵が時折見せる暗い影に違和感を感じながら読み進めると、後半、あっと驚く展開に。篠さんお家芸の和歌も登場。今回は柿本人麻呂の「天の海に雲の波立ち月の船 星の林に漕ぎ隠る見ゆ」人麻呂が未来人とも宇宙人とも思わせる壮大な和歌が効いている。2020/05/18