内容説明
まるで、拷問具をまとったかのような痛々しい肉体の自画像『折れた背骨』―フリーダ・カーロが、血みどろの自分を描き続けた理由とは?発表当時、貧困の三女神として酷評された『落穂拾い』―ミレーの最高傑作が負った大いなる誤解とは?歴史の闇や社会背景、画家たちの思惑を基に、名画が孕む恐怖と真実を読み解く20の物語。これまでになかった新しい視点による絵画鑑賞を提案した大人気シリーズ、新章開幕!
目次
フリーダ・カーロ『折れた背骨』
ミレー『落穂拾い』
フラゴナール『ぶらんこ』
バルデス=レアル『世の栄光の終わり』
ジロデ『眠るエンデュミオン』
シャガール『ヴァイオリン弾き』
ブグロー『ダンテとウェルギリウス』
ドレ『ジュデッカ/ルシファー(『神曲』地獄篇“第34歌”)』
フリードリヒ『ブナの森の修道院』
ドローネー『ローマのペスト』
ゲイシー『自画像』
ティツィアーノ『パウルス三世と孫たち』
ミレイ『オフィーリア』
ダヴィッド『テルモピュライのレオニダス』
レーピン『思いがけなく』
モネ『死の床のカミーユ』
マルティノー『懐かしい我が家での最後の日』
カラヴァッジョ『洗礼者ヨハネの斬首』
ブラウン『あなたの息子を受け取ってください、旦那さま』
ゴヤ『鰯の埋葬』
著者等紹介
中野京子[ナカノキョウコ]
作家・ドイツ文学者。北海道生まれ。2017年「怖い絵」展特別監修者。著書多数(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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れみ
52
怖い絵シリーズの新しいやつ。表紙は「ハムレット」のオフィーリアを描いたミレイの作品。この絵とか、マルティノーの「懐かしい我が家での最後の日」とか、絵のモデルになった人とか家が、作品のなかのモチーフと同じような運命をたどった…みたいなのがちょくちょく出てくるのが、今回は一番怖かったし印象に残った。それでいうと、ティツィアーノの「パウルス三世と孫たち」がいちばん怖いかもなあ…。2022/02/13
坂城 弥生
51
表紙の絵はオフィーリア。ハムレットの婚約者。美しいけど、やっぱり怖い。2021/09/27
けやき
40
表紙にもなっているミレイの『オフィーリア』が怖い!この絵を「土左衛門」って言ってしまう夏目漱石も凄いw2020/04/15
じーにあす
32
「怖い絵」私はこのシリーズを読んで絵画鑑賞に興味を持ちました。今回も面白かったです。絵を読む。「その歴史的・社会的・文化的背景、及び画家や発注者の思惑などを知ることで、作品の孕む怖さに気づき興味も倍化するのではないか」著者の思惑そのままに読む手が進む。重い病を背負いながら描かれるフリーダ・カーロ「折れた背骨」殺人鬼が描いた自らの姿ゲイシー「自画像」死にゆく愛人のデスマスクが沈むモネ「死の床のカミーユ」が印象に残る。人間の一生、その浮きながら沈みながら滑稽に歩む姿を画家は描かずにはいられないのかもしれない。2020/07/13
活字スキー
30
絵画の鑑賞をエンターテインメントとして大いに広めることに成功した『怖い絵』シリーズ、2016年の単行本の文庫版。今回は自分の知らなかった画家、作品が多かったが、知っていた作品も、キレキレの中野節で「読みこむ」ほどに味わいが変化してゆくのが面白かった。絵画を手がかりにして人間という存在の奥深くに分け入ってゆけば、そこに心胆寒からしめるものが蠢いているのは必然。コロナが収まったら、紹介されていた作品にひとつでも多く会うために美術館通いにも励みたい。2020/04/21