出版社内容情報
「心の病気で働けないヤツは屑」と言われる社会。「高齢者優遇法」が施行され、死に物狂いで働く若者たち。こんな未来は厭ですか――?現役医師の著者が、医療と社会の未来をブラックな笑いで描く短篇集。
内容説明
努力と競争を過剰にもてはやす「ネオ実力主義」が台頭し、働かないヤツは人間の屑、と糾弾される社会で、思いがけず病気になってしまった男。(「人間の屑」)気軽に受けた新型の出生前診断で、胎児の重い障害を宣告されて中絶するか悩む夫婦。(「無脳児はバラ色の夢を見るか?」)医療や技術の進歩の先に見える、幸せな人生は幻想なのか。救いなき医療と社会の未来をブラックユーモアたっぷりに描く7編で綴る作品集。
著者等紹介
久坂部羊[クサカベヨウ]
1955年大阪府生まれ。大阪大学医学部卒業。作家・医師。2003年、小説『廃用身』でデビュー(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
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TERU’S本棚
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
アッシュ姉
95
久坂部さん十七冊目。改題前の『反社会品』というタイトルの方がしっくりくるブラックブラックな短編。医療の進歩がもたらすのは明るい未来だけではなく、落とし穴もあることを容赦なく突きつけてくる。超超高齢化社会で犠牲になるのは老人か若者か、生活保護に頼らざるを得ない人がいる一方で後を絶たない詐病による不正受給、出生前診断で中絶が増加する一方で不妊治療に通う夫婦、骨髄バンクで救われる命とドナーのリスクなど、日ごろ目を背けている問題への痛烈な投げかけに唸ってしまう。度々登場する変態的趣向は生々しくて毎回どぎまぎする。2020/02/03
キムチ
59
久坂部氏の筆が冴えるブラックユーモア~ユーモアは愉しめなかったが。でも 次作もきっと読むと思えた。7編の短編、1冊すぐに読める。が その余韻たるや、脳内で発酵 腐敗臭すら。有史以来、戦時下でない時間は僅少、日本でも自殺者だけでも年に2万強という中で「命の重さ」を口先でぺらっと語ることすら欺瞞を抱く。とは言え、本作を読み終えると、「人と語る際」眼を見るのが怖くなりそう‥ってふと感じた。仕事柄、ハッピーエンドや文学の薫り高い作品からどんどん距離を置いて行っている日々。 筆者ならではのアフォリズムがいい。2020/01/24
坂城 弥生
50
医学系のリアルにありそうな耳の痛い話ばかりの短編集。2021/03/31
いろは
44
ん?何かコレ読んだことあるかも?と思っていたら、同作者の短編集単行本『反社会品』の文庫版でした。本のタイトルは『黒医』ですが、そのタイトルの話が掲載されている訳ではない…というのが、何とも久坂部羊さんらしい。『無脳児はバラ色の夢を見るか?』という、K・ディックを彷彿とさせる話、これはホラー!夏に読めば良かった…。★★★☆☆2020/11/11
ロボット刑事K
34
流石は久坂部羊氏と言うしかありません。医療分野は、正にこの方の独壇場です。今回はブラックでホラーな短篇ですが、どれも一言、凄かった。社会不適応者、出生前診断、超高齢化社会、優秀遺伝子獲得、骨髄提供ドナー、不妊治療、そして老人の妄想、様々な闇、苦悩、葛藤が描かれ出来れば作品一つ一つに感想を書きたいくらいです。ファンタジーな設定のものもあれば、現実に起こりうるものもあり、いずれも読後はブルーな気持ちになれること請け合いです。☆4つ。わざわざブルーな気持ちになるために読書するのは、ある意味M気質なのでしょうか?2021/07/18