角川文庫<br> かわうそ堀怪談見習い

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角川文庫
かわうそ堀怪談見習い

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  • サイズ 文庫判/ページ数 240p/高さ 15cm
  • 商品コード 9784041084397
  • NDC分類 913.6
  • Cコード C0193

出版社内容情報

わたしは「恋愛小説家」と肩書きにあるのを見て、今のような小説をかくのをやめようと思った。
恋愛というものにそんなに興味がなかったことに気づいたのだ。これからなにを書こうか。


環境を変えるため、三年住んだ東京を離れ、中学時代に住んでいた区の隣り、かわうそ堀に引っ越した。
そして、考えた末に怪談を書くことにした。そう決めたものの、
わたしは幽霊は見えないし、怪奇現象に遭遇したこともない。
取材が必要だ、と思い立ち、たまみに連絡をとった。

中学時代の同級生・たまみは、人魂を見たことがあるらしいし、怖い体験をよく話していた。
たまみに再会してから、わたしの日常が少しずつ、歪みはじめる。

行方不明になった読みかけの本、暗闇から見つめる蜘蛛、
こっちに向かってきているはずなのにいっこうに近くならない真っ黒な人影、留守番電話に残された声……。

そして、たまみの紹介で幽霊が出るとの噂がある、戦前から続く茶舗を訪れる。
年季の入った店内で、熊に似た四代目店主に話を聞くと、
絶対に開けてはいけないという茶筒、手形や顔が浮かぶ古い地図があるという。
そして、わたしはある記憶を徐々に思い出し……。

わたしの日常は、いつからこんなふうになっていたのだろう。
別の世界の隙間に入り込んでしまったような。

柴崎友香が、「誰かが不在の場所」を見つめつつ、怖いものを詰め込んだ怪談作品。

内容説明

「恋愛小説家」、という自分の肩書きを見て、今のような小説を書くのはやめようと思った。環境を変えるために東京を離れ、中学から3年前まで住んでいた街の、かわうそ堀に引っ越して、怪談を書くことにした。そうは決めたものの幽霊は見えないし、怪奇現象に遭遇したこともない。取材が必要だと思い立ち、怖い体験をよく話していた中学時代の同級生に連絡をしてみる。それから奇妙なできごとに遭遇し、日常が少しずつ歪みはじめた―。

著者等紹介

柴崎友香[シバサキトモカ]
1973年、大阪府生まれ。99年、短編「レッド、イエロー、オレンジ、オレンジ、ブルー」が文藝別冊に掲載されデビュー。2004年、『きょうのできごと』が行定勲監督により映画化。06年、第24回咲くやこの花賞、07年、『その街の今は』で第57回芸術選奨文部科学大臣新人賞、第23回織田作之助賞大賞を受賞。10年、『寝ても覚めても』で第32回野間文芸新人賞受賞(18年に映画化)。14年、「春の庭」で第151回芥川龍之介賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

さてさて

153
日常を生きる中で、何かしら怖い体験の記憶があるように思います。この作品では、さまざまな体験の数々が27もの物語の中に散りばめられていました。柴崎さんを思わせる主人公が『怪談』を書くという決意の先に取材を進めていく様を見るこの作品。 『思い出さないほうがいい、なにかが』、という言葉にあるように、はっきり描かれないからこそ怖さが際立つのを感じるこの作品。日常に潜むちょっとした違和感の先にあるものを、見事な情景描写とともに、読者の頭の中にリアルに見せていく、病みつきになりそうな怖さを秘めた素晴らしい作品でした。2023/02/13

fwhd8325

80
怪談とは言え、短いエピソードでつながれていく中で、奇妙な親近感を感じてきます。ゾッとするようなこともあるけれど、どこかほんわかとする感覚もあって不思議な物語だなと思いました。あっという間に終わってしまいました。2020/03/14

はるを

77
🌟🌟🌟⭐︎⭐︎。1話完結全27話のエピソードを収録した長編小説。柴崎友香だし、発想も好きだし出だしも良かった。だけど日常なのか怪談なのか判然としない柴崎友香のお得意の漠然としたカンジが俺には退屈に感じてしまい半分くらいで飽きてしまった。読み終わってもあまり残らない。一週間もしたら全部忘れてしまいそうな内容が残念だった。結局どういう風なスタンスで読めば良いのか最後まで分からず仕舞だった。2021/03/17

コットン

75
sinさんのオススメ本の短編集。主人公は、いつの間にか恋愛小説家のレッテルが張られそこから逃れるかのように怪談作家に変身するためネタを探す。日常生活の延長線上にある気づかないものも含めて怖い体験が綴られる。家にまつわる話が多く、話の終わり頃新たな恐怖に繋がりそうなところで終わるのも柴崎さんならでは。文庫本の書き下ろしの『鏡の中』が一番怖い。 #イベント【日本の夏は、やっぱり怪談】〈其の一・和編〉2020/08/01

いたろう

74
恋愛小説家と呼ばれることに抵抗を感じ、怪談を書こうとする「わたし」。その怪談のネタを探すわたしの周囲で起こる不思議な出来事。それは、怪談、ホラーという怖い話というより、幻想小説めいた奇譚の様相。それぞれ断章のような、27章+αの短いエピソードは、不思議を不思議として提示しながら、その正体を明かすことなく、謎を残したまま終わる話が多い。そのテイストは、どこか内田百閒の小説を思い起こさせる。恋愛小説家という肩書きを良しとせず、新しい取組みをしようとするのは、柴崎さん自身の姿か。こんな柴崎さんの小説も興味深い。2022/09/02

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