出版社内容情報
海のそばの団地にある「ちどり文庫」。そこでは時間がゆっくり流れます。
内容説明
海のそばの団地に住む智治は学校の図書室で(ちどり文庫)と蔵書印が押された本を見つける。夏のある日、同級生の朝海がその本を手に智治の住む団地に現れる。調べたら場所は不明だが、「ちどり文庫」はこの団地の中に存在するという。その頃智治は、夜になると上階から聞こえる奇妙な音が気になっていた。やっと自治会長から「文庫」の管理人を教えてもらった2人は、雨の午後「ちどり文庫」を訪ねるが。人と本のやさしい絆の物語。
著者等紹介
河合二湖[カワイニコ]
1977年山口県生まれ。慶應義塾大学文学部卒業。公共図書館、大学図書館で勤務ののち、執筆に専念。2008年「バターサンドの夜、人魚の町で」で、第49回講談社児童文学新人賞を受賞、同作(『バターサンドの夜』と改題)でデビュー(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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佐島楓
61
元司書だという著者の経歴と、本のモチーフに惹かれて手に取る。「ちどり文庫」を中心に集うひとびととその痛みを丁寧に描いていて好感が持てた。文庫とは、小型の図書のほかに私設図書館という意味も持っている。本も文庫もコミュニケーションのひとつの手段であるべきだと最近思うようになったのだが、それに対してのひとつの答えがいただけたようで嬉しかった。2019/07/25
ぶんこ
50
還暦過ぎた今まで、「文庫」が近くには無い生活だったので、ほのかな憧れがあります。自宅を開放して子ども達と本に親しむ・・・う〜ん、理想の老後。三咲さんが羨ましい。母子家庭の智治君の母思いにウルッときたり、真里さんと霧澤さんの幸せを願ってみたりと、私も三咲さんになった気持ちで読んでいました。その三咲さんが、遂に自宅に文庫を開設するまでの日々が楽しそうでした。美波さんとの友情も深まって、この後が楽しそうで続きが読みたくなっています。2020/02/13
ami*15
43
優しさと少しの懐かしさが漂う物語。「ちどり文庫」の入江さんを軸に本を愛する人々の物語が紡がれていく。私も真理と同じく小さい頃絵本を読むことを避けてきた人間なので、絵本との思い出がないことが凄くもったいないことだと思った。また昔から読み継がれる文学作品は多くの人を魅了し、世代は違っても作品の面白さを読んだ人同士で共有することができる。好きな本について楽しく語り合う小学生たちと入江さんの姿がとても羨ましく見えた。自分の世界を広げるために今まで手にしたことのない分野の本も少しずつ読んでいきたいと思いました。2019/09/01
はな
24
古い団地の中でママたちがしていたちどり文庫。団地という中で人とのつながりだったりが描かれている。ほんわか温かいだけではなく、その人が抱えている苦しさとか悩みが紐解かれて少しでもその重荷がほどけるような関わりがあり、昔のお互い様だったりつながりを感じさせてくれました。自宅を改装して本の貸し出しをするのはハードルは高そうだけれど、その団地の人向けでゆったりとするにはいいなぁと思いました。2021/08/25
那由多
23
地域に住む子供たちが減ってきて、休館中?閉鎖?のちどり文庫。地域文庫はなかったけれど、夢中になっていた児童書が懐かしくなる。新しく開設した"ちどり文庫はなれ"で、新しい人と人、本と人の出会いがあり、また懐古もあるんでしょうね。はなれにたくさんの人が訪れますように。2019/11/24