出版社内容情報
技術の発展は、善か悪か――。直木賞作家が放つ問題作!
内容説明
大阪の工場で技術開発にすべてを捧げた郷司音三郎。これからの世に必要なものは無線機と考え、会社に開発を懇願するが、あと一歩で製品化というところで頓挫してしまう。新たな環境を求め、学歴を詐称して東京の軍の機関に潜り込んだ音三郎だったが、そこで待っていたのは日進月歩の技術革新と、努力だけでは届かない己の無力な姿だった…。戦争の足音が近づく中、満州に渡り軍のために無線開発を進める音三郎の運命は?
著者等紹介
木内昇[キウチノボリ]
1967年東京生まれ。出版社勤務を経て、2004年に『新選組 幕末の青嵐』で小説家デビュー。08年『茗荷谷の猫』が話題となり、09年早稲田大学坪内逍遥大賞奨励賞受賞。11年『漂砂のうたう』で直木賞、14年『櫛挽道守』で中央公論文芸賞、柴田錬三郎賞、親鸞賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
タツ フカガワ
41
無線機試作品で頓挫した音三郎は、学歴を詐称して東京の陸軍研究所へ潜り込む。やがて念願の真空管無線機が完成するが、その直後満州の関東軍のもとへと出向を命じられる。かつて自分の発明品で人々を幸せにしたいと願って音三郎は、いまや無線機の実績を上げるためなら戦争さえ厭わない考えに変わっていた。明治~大正~昭和期を背景に、近代化の波に翻弄された男の一生がなんともやるせない。ラスト音三郎の「利平……なんの冗談じゃ」の声が虚しく響く。これまで読んだ木内作品のなかでいちばん重たい作品かも。2021/08/08
優希
39
自分の全てを技術開発に捧げた音三郎。挫折から新たな環境を求め、学歴詐称までしてしまうのは己に純粋が故だったのですね。日進月歩の技術革新と自らの無力さしか待っていないのが辛いところでした。何が正解かは分かりませんが、音三郎の歩んできた道に何か欠けたものがあるのかもしれません。お仕事小説というより人間の心理を描いた物語と言えるでしょう。2025/04/10
007 kazu
37
無線電信機のお披露目に失敗をする音三郎。製品化が出来ない失意の中、同僚とも技術の思想の違いから上手くいかない。そんな中、恩人の誘いから学歴を詐称してまで東京の研究所へ移り、無線の研究に没頭、いよいよ満州へ。幼馴染で義弟でもある利平のいる関東軍のため働くことになるが戦争の道具として無線が使われることに抵抗を感じつつも、自己証明のために抗えない。張作霖爆殺事件の場面は読み応えあるが、それ以上に手段であるはずの技術をエゴのために必死に研究し、人に対しての感情を失う音三郎の様が終始痛々しく読者に迫る。(続く)★52024/08/08
piro
37
自分が望む技術の実証に盲目的な音三郎。物語の中で少しずつ折り重なってきた小さな違和感が、結末につながった感。技術の向上にのめり込み周囲が見えなくなることの危うさ、ピュアであることの罪深さを語る様な物語でした。何が正解だったのかはわからない。けれども音三郎の歩んだ生涯は、何かしら足りないものがあったのだと思います。個人的には音三郎が感じた負の意識が理解できると共に、利平の思いもよくわかる。今の世にも通ずる、成り上がることの難しさを強く感じる、寂しい思いに襲われた結末でした。2024/04/22
エドワード
34
音三郎は純粋で人を疑うことを知らない。科学を信じ、無線機の技術開発に努める。野心的な彼は、実力者・弓濱を頼って、学歴を偽り東京の陸軍十板研究所へ移籍する。軍人となった幼馴染で、妹の夫・利平と再会し、利平の上司の娘と結婚した音三郎は、昭和の訪れとともに、野望に燃え、無線機の軍事利用にあえて協力する。これも時代の運命か、懸命に開発に努めた彼の技術が発揮されたのは満州某重大事件だった。非情な軍が彼に与えた報酬は…。時々の判断が次々と裏目に出る下巻、圧巻の終幕。音三郎が平和な時代に生きていたら、の感に絶えない。2019/10/09
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