内容説明
教師が命を絶つ前に黒板に書いた記号が蘇る「先生踏切」、廃屋で見つけた謎の木箱が恐怖をもたらす「あにもの」、ある滝にまつわる怪談実話が時を経てシンクロする「滝の帰りに」、通夜の会食のあと記憶が消える「お斎のあと」、真夜中に鳴るインターホンの秘密が恐ろしい「黒い縦線」、心霊スポットとして名高い霊園にまつわる怪異を描く「S霊園」など40篇。平凡な日常生活に忍び込む怪異の数々に、じわじわと背筋が寒くなる。
目次
誤変換
友人がいた街
みずあと
失踪
鳩を見た広場
先生踏切
カンカン女
カップ麺のゆくえ
あにもの
ヤストミさん〔ほか〕
著者等紹介
福澤徹三[フクザワテツゾウ]
1962年福岡県生まれ。デザイナー、コピーライター、専門学校講師を経て作家活動に入る。著書に第10回大藪春彦賞受賞作『すじぼり』など多数(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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夢追人009
168
福澤徹三さんの怪談には如何にも現実にありそうなリアリティーが感じられて絵空事と全否定し切れない恐怖感が漂う迫真の読み心地が最大の魅力だなと思いますよね。『辺鄙なコンビニ』十五年ほど前の夏の夜にCさんは彼女と山の中腹にある観光道路へドライブに行き暫くそこで過ごした後に山を下るとふもとに名も知れぬコンビニがあった。店内に入るとレジカウンターには誰もおらず、品揃えもお粗末で棚の空きも多くて埃をかぶった商品もあった。スナック菓子をカゴに入れレジに置いて「すいませーん」と奥に叫んだが、途中で彼女がレジ横を指差した。2020/12/20
モルク
105
40編もの怪談実話集。ぞわりとくる話が満載。夜中に鳴るインターホンの秘密を知ってしまった恐ろしさ「黒い縦線」、同棲彼女との記憶を描く「失踪」が印象的。40編の中にはそれが…?というのもあるのは否めないが、一編づつが非常に短く読みやすくてあきさせない。文中何度も出てくる事故物件公示サイト「大島てる」がとても気になり思わずググる。2020/06/05
HANA
74
実話怪談集。語られている内容自体は大した事が無いか勘違いみたいなのも多いのであるが、著者の淡々としていてそれで段々と盛り上げてくるような語り口が実に上手い。「カップ麺のゆくえ」なんて、カップ麺が無くなるというただそれだけの話なのにそれを読ませるのは筆力というか何というか。ただ「事故が相次ぐ場所」とか表題作の「S霊園」とかだと、その淡々とした筆致が別の迫力を持って迫ってくる。「事故の相次ぐ場所」の実例が羅列される部分の怖さと言ったら…。やはり実話怪談は話の内容もそうだけど、筆力も重要と教えられた一冊でした。2019/08/30
眠る山猫屋
64
正統派実話怪談と云うべきかな。恐怖感はそれほど高くない。なぜなら怪異に遭遇した人々が(賢明にも)早々に距離を置いたり、縁を切って身の安全を選択しているから。だからこそ語り手がいるという、当たり前のリアルさがよい。S霊園や事故物件が重なるマンションなど、近寄りたくない場所の数々。因縁が解き明かされない場所は沢山あるんだろう、近寄りたくないけど気づくのは難しいんだろうなぁ。廃屋で開けた箱から始まる『あにもの』みたいな話は興味深い。エキセントリックな彼女が残した“呪い”の文字疵も。2023/03/07
なっち
41
購入して即イッキ読みしてしまった~一話ずつが短いからどんどん読めちゃう。実話だからこそオチが不明で当たり前。それこそがリアリティだと思う。そんな中『黒い縦線』とか、こんな経験したら腰も抜けるわ。『S霊園』って、あの霊園?2019/08/24